「一人親方の確定申告って何から手をつけていいかわからない」
「確定申告に必要な書類は?いつまでにやらなければならない?」
個人事業主である一人親方は、確定申告を一人で行う必要があります。一方で、以上のような疑問や悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、一人親方の確定申告の方法について解説していきます。確定申告で必要な書類や、具体的な手順を確認していきましょう。
一人親方の確定申告の方法
一人親方の確定申告の方法には、青色申告と白色申告の2種類があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、ご自身に合った方法を選ぶことが大切です。まずは両方の特徴について確認していきましょう。
青色申告
青色申告は、白色申告に比べてより節税できるというメリットがある方法です。
事業所得・不動産所得・山林所得のうち一つ以上の所得がある個人事業主で、事前に「青色申告承認申請書」を提出している人が対象となります。
複式簿記によって記帳を行うことで控除が受けられますが、その分記帳のコストや手間がかかります。白色申告に比べ手間はあるものの、出費を抑えるという点ではメリットが大きいと言えるでしょう。
白色申告
白色申告は、青色申告に比べて簡易な方法であるというメリットがあります。
青色申告の対象にならない場合等は、白色申告を行うことになります。青色申告と比較すると専門的な知識も要しない部分は利点といえるでしょう。
一方で、節税という面から考えると、青色申告に軍配が上がります。
一人親方が確定申告で提出する書類
一人親方として確定申告をする際、実際に提出する書類は、青色申告・白色申告によって異なります。ここからは、それぞれの方法で確定申告をする場合の提出書類について見ていきましょう。
青色申告の提出書類
青色申告の場合、必要な書類は以下のとおりです。
- 確定申告書
- 青色申告決算書
- 添付書類
- 貸借対照表
- 損益計算書
以上5つが提出することになる書類です。
確定申告書と青色申告決算書は、どちらも国税庁のホームページからダウンロードすることができます。ご自身で書類を作成する場合は、一度確認しておきましょう。
白色申告の提出書類
白色申告の場合、必要な書類は以下のようになります。
以上の3つが提出することになる書類です。
こちらも確定申告書と収支内訳書については、国税庁のホームページにてダウンロードすることができます。
確定申告の対象期間と申告できる期間
確定申告の対象となる期間は1月1日~12月31日の1年間になります。
そして、翌年の2月16日~3月15日に先に解説した書類を揃え、申告をしなければなりません。
例:
2023年1月1日~2023年12月31日の期間について、
確定申告は2024年2月16日~2024年3月15日に行わなければならない
2月16日~3月15日の間に申告を行うことはもちろん、納税まで完了する必要があります。余裕を持ったスケジュールを組むことが大切です。
一人親方が確定申告する際の必要書類
確定申告をするにあたって、添付書類として必要なものや、提出はしなくとも必要な書類があります。主なものとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 収入・支出がわかる書類
- 会計帳簿
- マイナンバーが確認できる書類
- 各種控除の証明書
- 国民健康保険料、国民年金の証明書
- 金融機関の口座情報
ここからは、以上のような必要な書類について確認していきましょう。
収入・支出がわかる書類
一年間の収入と支出を計算するために必要になる書類です。
確定申告書等とともに提出するものではなく、あくまで書類作成のために必要な資料になります。具体的には、収入が確認できる書類として請求書、支出が確認できる書類として領収書が挙げられます。
会計帳簿
日々の取引内容を記録した書類が、会計帳簿になります。正確な情報を記入し、保管する義務があるものです。こちらも提出の必要はありませんが、提出書類を作成する資料として準備しておきましょう。
マイナンバーが確認できる書類
マイナンバーが確認できる書類も準備しておく必要があります。
マイナンバーカードが一般的ですが、なければ通知カードや、マイナンバーの記載がある住民票等を用意しておきましょう。扶養控除や配偶者控除を申請するのであれば、申請する家族のマイナンバーも必要になります。
各種控除の証明書
控除を受けるために必要になる証明書があります。
こちらは添付書類として提出の必要がありますので、忘れないように確認しておく必要があります。保険会社等から郵送されてくるのが一般的です。
国民健康保険料、国民年金の証明書
こちらも控除を受けるために必要な書類です。国民健康保険料の支払額が確認できる書類や、国民年金の払込証明書を用意しておきましょう。
金融機関の口座情報
還付金がある場合、受け取るための口座に関する情報についても用意しておきましょう。
還付申告に対応していない金融機関もあるため、注意が必要です。還付金は口座振込以外の方法でも受け取ることができますが、口座振替に比べて時間がかかってしまいます。
事前に対応しているかを確認したうえで、口座情報を準備しておくことをおすすめします。
一人親方の確定申告の手順
一人親方として確定申告をする場合、具体的な手順は以下のとおりです。
- 年間の収支を帳簿にまとめる
- 所得金額の算出
- 各種控除の金額の算出
- 所得税額の算出
- 確定申告書の作成
- 必要書類の提出
- 税金の納付・還付
ここからは、一つ一つのステップごとのポイントについて解説していきます。
年間の収支を帳簿にまとめる
正確な収入を報告するために、日々の取引を帳簿にまとめる作業が必要です。
確定申告は、1年間の収入を報告する必要があります。これをより正確にするための作業です。もとになる請求書や領収書等は、日ごろから捨てずにきちんと保管しておきましょう。
所得金額の算出
どれだけの所得金額があるのかを算出していきます。
所得金額とは、簡単に言い換えると「1年間でどれだけ儲けたか」というものになります。一人親方の場合は「事業所得」として計算し、計算方法は以下のとおりです。
事業所得 = 総収入金額 – 必要経費
総収入金額とは、対象となる年の1月1日~12月31日の間に、事業活動により得た収入のことです。金銭だけでなく、物なども対象となる点に注意しましょう。
必要経費とは、売り上げに関係する経費のことです。仕入れにかかった代金や、旅費交通費等が挙げられます。
1年間に得た全ての収入から、それにかかった経費を差し引くことで、どれだけ儲けたかが算出できるということになります。
各種控除の金額の算出
確定申告書の「所得から差し引かれる金額」の項目になります。
控除には様々な種類がありますが、一般的な医療費控除・社会保険料控除について簡単に解説していきます。医療費控除は、10万円を超える医療費を支払ったときに適用できる控除です。ただし、所得金額が200万円未満の場合、所得金額の5%を超える医療費を支払ったときに適用されます。
社会保険料控除は、申告をする人がその年に支払った国民健康保険料や国民年金保険料の全額が対象になる控除です。
以上のほか、様々な控除があり、それぞれ要件が異なります。
ご自身にどの控除の適用ができるかという点では、支出を抑えるうえで重要なポイントです。場合によっては専門家に相談することをおすすめします。
所得税額の算出
所得税額を計算することで、税金をいくら納付すればよいかを計算することになります。所得税額の算出には、まず「課税所得金額」を計算します。
課税所得金額 = 所得金額 – 各種控除
1年間に儲けた分から、各種控除を差し引くことで、課税所得金額がわかります。そして、この「課税所得金額」に税率をかけて、計算することになります。
所得税額 = 課税所得金額 × 所得税の税率 – 税額控除額
税率は課税所得金額によっても異なります。詳しい税率や税額控除額については、国税庁のホームページでチェックしておきましょう。
確定申告書の作成
必要な金額が計算できたら、確定申告書を作成していきます。書類作成の方法は以下の3通りです。
- 手書きで作成する
- 確定申告書等作成コーナーを利用する
- 会計ソフトを利用する
手書きで作成する場合は、必要な様式を国税庁のホームページからダウンロードしておきましょう。国税庁等の窓口で受け取ることができるほか、郵便で受け取ることも可能です。
確定申告書等作成コーナーは、国税庁が提供している確定申告書の作成サービスです。手書きに比べて簡単に作成が可能という点がメリットといえます。
民間企業が提供する会計ソフトでも、確定申告書を比較的簡単に作成することができます。ご自身に合った方法を選び、確定申告書を作成しましょう。
税務署に必要書類を提出する
確定申告書を作成したら、必要書類をまとめ、税務署に提出します。確定申告書等作成コーナーを利用した場合、e-Taxでの提出が可能です。それ以外の場合は、郵送や直接持参により提出します。
税金の納付・還付
原則として、税金の納付も2月16日~3月15日に行わなければなりません。納付書により提出する方法や口座から引き落とす方法があります。こちらもご自身に合った方法を選択したうえで、忘れず納付をしましょう。
まとめ
一人親方として確定申告をする際の手順や必要書類、申告期限について解説してきました。
まとめると以下のようになります。
- 確定申告には「青色申告」「白色申告」の二つがある
- 2月16日~3月15日の期間に確定申告書の提出・税金の納付を行う必要がある
- 税金や経費に関する知識は必要になる
確定申告にあたり、どうしても税金等に関する知識が必要になる場面もあります。また、控除面でも知っていると出費を大きく抑えられるケースが数多く存在します。
加えて、自分一人で書類の準備や作成を行おうにもなかなか手が回らないという方も少なくないのではないでしょうか。
専門の税理士に相談することで、税金に関するアドバイスがもらえたり、確定申告を依頼して手間をなくすことができる可能性もあります。困った際は一度、専門家に相談してみることをおすすめします。