入札談合とは?違反するとどうなるの?

入札談合という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。一方で、以下のように思われる方も少なくないと思います。

「入札談合とは?具体的にどのようなことが入札談合にあたる?」「入札談合にはどのような措置や罰則がある?」

入札談合は法律で禁止されている行為ですが、今回は、入札談合について解説していきます。入札談合がどのような行為で、なぜ禁止されているのか、事例にも触れながら見ていきましょう。

入札談合とは

入札談合とは、競争入札において、事業者同士が事前に相談して受注企業や金額などをあらかじめ決めることを言います。

本来は競争する事業者同士があらかじめ相談しておくことで、競争することなく高い価格で落札ができます。しかし、入札談合を行うことで、以下のような問題が生じます。

  • 公正な競争が阻害されてしまう
  • 技術力の向上など、経営や営業に関する努力のモチベーションが失われてしまう
  • 税金が余分に使われてしまう

入札制度は、公正な競争のもとに国や地方公共団体などが発注先を決めるためのものです。契約にかかるお金は税金のため、好きなだけ使えるということはありません。同時に、公共のサービスや施設の維持といった生活のうえで重要な契約になることもあり、品質にも気を付けなければなりません。

しかしながら、入札談合が行われると、企業は技術力の向上も営業努力がなくとも、高い価格で落札ができてしまい、結果として税金が無駄に使われてしまうだけでなく、モチベーションが失われることにもつながるのです。

以上のような問題があるため、入札談合は法律で禁じられています。

なお、発注者である国や地方公共団体の職員が談合に参加する「官製談合」というものもあります。もちろんこちらも、事業者同士で行われる入札談合同様、法律により禁止されています。

入札談合に対する罰則

入札談合に対する罰則は、以下の法律により定められています。

  • 刑法
  • 独占禁止法
  • 官製談合防止法

ここからは、入札談合を行うことでどのような罰則があるのか、法律ごとに見ていきましょう。

刑法による罰則

刑法では、第96条の6 公契約関係競売等妨害によって罰則が定められています。具体的な罰則は以下のとおりです。

3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金または両方

罰金だけでなく懲役が科され、場合によってはその両方が科されることになります。また、官製談合の際、公務員が事業者から見返りに金銭を受け取っていた場合などは収賄罪にあたり、5年以下の懲役が科されます。

独占禁止法による罰則

独占禁止法では、以下のような罰則が定められています。

  • 5年以下の懲役または500万円以下の罰金(第89条第1号)
  • 法人に対して5億円以下の罰金(第95条第1号)

こちらも刑法と同じく、懲役と罰金が科されることになります。法人に対しては5億円以下という巨額の罰金が科されることもあります。

官製談合防止法による罰則

官製談合の場合、公務員に対しても罰則があります。具体的な罰則としては、以下のとおりです。

5年以下の懲役または250万円以下の罰金

なお、公務員のどのような行為が罰則の対象になるかについて、法律には以下のように規定されています。

  • 事業者に談合を行わせること
  • 入札前に受注者を指名、希望する事業者について伝えること
  • 入札に関して秘密として管理されている情報を特定の事業者に教える
  • 依頼を受けて入札に参加する者を指名する等して入札談合を幇助する

官製談合防止法で罰則の対象になっているのは公務員ですが、入札談合に参加すればもちろん、刑法や独占禁止法で処罰の対象となります。

以上のような行為は法律違反であることをしっかり確認しておきましょう

入札談合に対する措置

入札談合には、罰則だけでなく以下のようなペナルティがあります。

  • 排除措置命令
  • 課徴金納付命令
  • 損害賠償請求

ここからは、罰則以外のペナルティについて詳しく見ていきましょう。

排除措置命令

排除措置命令とは、独占禁止法に基づき公正取引委員会が違反者に対して、必要な措置を命ずることを言います。例えば、違反行為の差止めなどが命じられることになります。

課徴金納付命令

課徴金納付命令とは、公正取引委員会が違反者に対して課徴金の納付を命ずることを言います。課徴金は違反した期間やその期間中の売上高、事業者の規模に基づいて課徴金が算定されます。

損害賠償請求

入札談合を行った企業は、損害賠償請求の対象にもなります。独占禁止法によれば、違反者は故意・過失を問わず、民事上の責任を負うことになります。これにより、被害者は違反した企業に対し、損害賠償を請求することができます。

入札談合の事例

ここからは入札談合により、実際にどのような罰則が適用されたかについて、近年の事例をもとに見ていきましょう

事例1

独立行政法人国立病院機構が発注する医薬品の入札に参加していた事業者6社が独占禁止法違反とされた事例です。

受注すべき者をあらかじめ決定したうえで、それ以外の事業者は受注予定者が受注をできるよう協力することを合意していました。

以上の合意のもとで、受注予定者を決定し、それ以外の事業者は受注予定者が連絡した価格を上回る入札価格を提示して協力しています。結果として、参加した事業者に対して排除措置命令と課徴金納付命令がなされました。

排除措置命令として、今後受注予定者を決定しないことや、定期的な監査を行うことなどが命じられました。また、納付を命じられた課徴金は総額6億2728万円となっています。

参考リンク:(令和5年3月24日)独立行政法人国立病院機構が発注する九州エリアに所在する病院が調達する医薬品の入札参加業者らに対する排除措置命令及び課徴金納付命令について

事例2

日本年金機構が発注する特定データプリントサービスの入札に参加していた26社が独占禁止法に違反すると判断された事例です。

こちらも受注すべき者を決定し、それ以外の事業者は受注予定者が受注できるよう協力するという合意がなされていました。以上の合意のもとに、受注予定者を決定したうえで、それ以外の事業者が高い価格で入札に参加することで協力しています。

従業員に対する周知徹底や定期的な監査などの排除措置命令と、総額17億4161万円の課徴金の納付が命じられています。

参考リンク:(令和4年3月3日)日本年金機構が発注するデータプリントサービスの入札等の参加業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令等について

まとめ

ここまで、入札談合について解説してきました。

  • 入札談合とは本来競争する事業者同士が事前に相談して、 受注企業や金額などをあらかじめ決めること
  • 入札談合に対しては懲役や罰金などの罰則がある
  • 罰則のほか、行政庁の命令や民事上の責任を負うことになる

入札談合を行うことで、懲役や巨額の罰金といった罰則があるだけでなく、将来にわたって会社の信用を失うことにもなります。

違反行為をしないよう社内での周知徹底が重要なのはもちろんですが、どのような行為が違法なのかを知っておくことで防止につながることにもなります。

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