「入札不調や入札不落とは? その後はどうなる?」「不落随契とはどのようなこと?」
以上のような疑問をお持ちの方も多いかと思われます。
国や地方公共団体が工事や物品調達の契約について、発注先を決めるために必要な手続きが入札です。契約の際に使われるのは税金のため、入札によって安く良いものを提供してくれる事業者を選ぶことになります。
しかしながら、入札がうまくいかず、相手方が決まらないなどといった問題が生じることもあります。
その際に入札不調や入札不落といった言葉が出てきます。今回は、入札不調や入札不落の言葉の意味について解説していきます。
不調・不落の後の流れや、不落随契という言葉についても確認していきましょう。
入札や入札参加資格について不安なことや疑問などございましたら、一度入札業務に強い行政書士法人ファーストグループにお気軽にご相談下さい。
入札不調・入札不落とは
入札不調・入札不落とは、どちらも入札が成立していない状態のことです。
結果として入札により発注先が決まっていないことは同じですが、両者はまったくの別物です。まずは、それぞれがどのようなものかを詳しく見ていきましょう。
入札不調とは
入札不調とは、入札に参加する事業者がおらず、落札者が決まらないことを言います。
入札に参加する事業者がいないという状況は、実は珍しいケースではありません。例えば、以下のような原因が考えられます。
- 発注機関の調査不足等により、魅力的でない条件を提示した
- 条件に対応できる事業者がいなかった
事業者から見て魅力のない案件であれば、もちろん人は集まりません。結果として入札に誰も参加しなかったという状態になってしまいます。
もしも入札に参加した事業者が1社のみだった場合は、発注する機関により対応が異なるため注意が必要です。この場合については、法令上の明確な規定はありません。
例えば、競争性を確保できないことを理由に、無効となるケースも考えられます。参加した事業者が1社のみだった場合の対応については、入札参加前から確認しておくようにしましょう。
入札不落とは
入札不落とは、発注機関の予定価格を超えているために落札者が決まらないことを言います。
あらかじめ定められた予算上限のことを予定価格と呼びます。はじめにも触れたとおり、契約に使われるのは税金のため、この予定価格を超過して発注することはできません。
たとえ入札に複数の事業者が参加していたとしても、その全てが予定価格を超えた価格を提示していた場合は落札者が決まらないことになります。
入札不調は参加者が誰もいないことにより落札者が決まらないことに対し、入札不落は参加した全員が予定価格を超えてしまい誰も落札できないという状況です。
入札不調・入札不落は増えている
入札不調や入札不落は、近年増加傾向にあると言われています。原因や課題として、以下のようなものが挙げられます。
- 技術者や作業員が足りていない
- 労務費や資材価格が高騰している
働き手の不足により、利益率の低い工事の入札には参加しない事業者が増えています。また、労務費や材料費が高騰し、採算がとれない、条件に合わないといったケースも増加しているようです。
特に維持修繕工事を中心に入札不調・入札不落が増加しており、条件を見直すなど、公的機関も改善に向けた取り組みを行っています。
入札不調・入札不落になるとどうなる?
入札不調や入札不落になると以下のような方法で発注先を決めることになります。
災害復旧のための工事や公共施設の維持修繕工事など、必要な行政サービスのため、発注先が決まらないために発注を取りやめるといったことはできません。
そのため、入札不調や入札不落によって発注先が決まらなくとも、企業と契約を結ぶための流れがあります。ここからは、不調・不落のその後の流れに注目して、言葉の意味などについて詳しく解説していきます。
再度公告入札とは
再度公告入札とは、入札手続きを公告からやりなおすことです。公告の期間が通常よりも短くすることが認められています。
再度公告入札では、仕様書や予定価格を一定の範囲内で手直しすることができます。一方で、内容に大きな変更があれば新規の入札になります。
なお、入札を繰り返し行う「再度入札」という言葉もあります。再度公告入札との違いは以下のとおりです。
言葉は似ていますが、以上のように意味は大きく異なりますので注意しておきましょう。
入札や入札参加資格について不安なことや疑問などございましたら、一度入札業務に強い行政書士法人ファーストグループにお気軽にご相談下さい。
不落随契とは
不落随契とは、入札不落の場合に例外的に行われる随意契約のことです。
随意契約は、国や地方公共団体が競争入札によらず、任意(随意)に相手を選定し、契約を締結する契約方法です。入札不落の場合に行われる随意契約のため、不落随契(不落随意契約)と呼ばれます。
税金を使う以上、できるだけ安い価格・高い品質の条件で契約するために入札によって発注先を決定します。そのため、不落随契は以下のような場合に、例外的に行われるものです。
- 手続きをやり直す時間がないとき
例:災害復旧工事など
- 再度入札をしても不落の場合
例:3回程度の再度入札でも入札不落
入札手続きは長期間にわたることになるため、手続きをやりなおしている時間がないというケースも考えられます。また、入札を繰り返しても不落の場合は、不落随契が選択肢の一つに上がります。
ただし、あくまでも予定価格の範囲内で契約をしなければなりません。不落随契の場合は、事業者ごと個別に価格交渉を行い、契約を行います。
まとめ
入札不調・入札不落の意味や、その後の流れについて解説してきました。ここまでの内容をまとめると、以下のようになります。
- 入札不調とは、入札に参加する事業者がおらず、落札者が決まらないこと。
- 入札不落とは、発注機関の予定価格を超えているため、落札者が決まらないこと。
- 再度公告入札とは、入札手続きを公告からやりなおすこと。一つの手続きのなかで繰り返し入札を行うことは「再度入札」と呼ばれる。
- 不落随契とは、不落随契の場合に例外的に行われる随意契約のこと。予定価格の範囲内で、個別に価格交渉を行って契約が行われる。
わかりにくい単語もあったかとは思いますが、入札不調・入札不落が増加していることからも、決してこれらは例外的なケースではありません。入札に参加するうえでは、意味や使い方についても詳しく知っておく必要があるでしょう。
これを機に言葉の意味や不落・不調後の流れについて詳細に確認しておくことをおすすめします。