経営事項審査(経審)という言葉はご存知でも、「そもそも経審とはどんなもの?」「経審を受けるメリットはある?絶対に必要?」「経審の申請の流れは?」のような疑問をお持ちの方は少なくないと思われます。
そこで今回は、経審とはどのようなものかについて解説していきます。経審を受けるメリットや申請の流れも、一緒に確認していきましょう。
経営事項審査(経審)とは建設業者の経営状況や技術力等をもとに点数化するもの
経審とは、建設業者の経営状況や技術力等をもとに点数化するものです。公共工事を元請業者として受注する場合には、この経審を受けていなければなりません。
言い換えれば、公共工事を元請業者として受注する予定がなければ、必ず受けなければならないというものではありません。
しかし、後に詳しく説明するように、経審の結果が出るまでには時間がかかります。国や自治体の工事に関する競争入札に参加する予定がある場合、または参加したいという意思がある場合は、あらかじめ準備を手続きを進めることをおすすめします。
経営事項審査(経審)の審査項目
では実際に経審ではどのような点が評価されるのか、審査項目を確認します。「経営規模」「経営状況」「技術力」「その他の審査項目」をかけあわせて審査されることになります。
経営規模
年間の工事種類別の完成工事高、自己資本額、利益額等を基準にした指標です。
経営状況
営業キャッシュフロー、利益剰余金等を基準にした指標です。会社の財務状況をそのまま反映した数値になります。
技術力
技術職員数と元請完成工事高から算出する指標です。
その他の審査項目
社会貢献度等を表す指標です。社会保険の加入状況、防災活動への貢献、建設機械の保有状況等を基準にした指標です。
経営事項審査(経審)を受けるメリット
経審を受けるメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- 公共工事の入札に参加できる
- 自社の実績をアピールできる
- 自社の経営状況・技術力を客観的に見ることができる
ここからは、これらのメリットについて詳しく見ていきましょう。
公共工事の入札に参加できる
一番のメリットは、公共工事の入札に参加できるという点です。
国や自治体が発注する公共工事を受注するためには、それぞれの競争入札に参加しなければなりません。経審を受けることで、この競争入札に参加することができます。
(経審を受けたあと、競争入札参加を希望する自治体に「入札参加資格審査」の申請が別途必要です。詳しくは以下の関連記事をご覧ください)。
公共工事は発注元が国や地方公共団体です。そのため、一般的に大規模な工事が多く、また、安定して長期的に工事を請け負うことができます。
加えて、上記のような公共工事で実績を積むことで、国や地方公共団体が認めた建設業者としての信頼や実績も得られるという点も、大きな利点と言えるでしょう。
自社の実績をアピールできる
経審を受けることで、自社の実績のアピールにも繋がります。
国や自治体の競争入札に参加するためには、まず競争入札に参加するための資格申請(入札参加資格審査申請)を行わなければなりません。
入札参加資格審査申請を経て資格の登録が行われると、国や自治体によっては建設業者の名前や、格付けなどの情報を公開する場合もあり、自社の実績をアピールする機会につながります。
また、民間の事業者でも、経審を受けていることを工事受注の条件にしているところもあるようです。
経営状況や技術力が点数化される経審は、自社の実績をアピールする手段として使えるという点もメリットと言えます。
自社の経営状況・技術力を客観的に見ることができる
自社の経営状況や技術力を客観的に確認できるという点も、大きなメリットと言えるでしょう。
自社の強み・弱みを知っておくことは、経営においても重要です。その点、経審は許可行政庁や経営分析機関が建設業者として評価をしてくれるものになります。
自社を客観的に見ることができるということも、経審の利点です。
経営事項審査(経審)申請の流れ
経審の申請をする場合、その流れは以下のようになります。
- 決算変更届を提出する
- 経営状況分析機関に財務諸表を提出する
- 経営規模等評価申請書を提出する
また、以上の前提として、建設業許可を受けている必要があるので注意しましょう。ここからは、経審申請の流れについて、詳しく解説していきます。
決算変更届を提出する
決算変更届とは、決算日から4ヶ月以内に提出する必要のある届出書のことです。
以下のような書類を作成することになります。
- 工事経歴書(決算期に行われた工事を記載するもの)
- 財務諸表(決算書をもとに作成するもの)
- 事業報告書(会社の概況や財務状況などを記載するもの)
この決算変更届は、経審を受ける、受けないに関わらず、必ず許可行政庁に提出する必要があります。提出を怠ると、5年毎に行う建設業許可の更新申請を行うことができません。
経審の受審に関わらず、期限内に提出できるように準備をしましょう。
経営状況分析機関に財務諸表を提出する
決算変更届を提出したら、経営状況分析機関に財務諸表やその他の書類を提出します。
財務諸表は、決算変更届を提出する際に、決算書をもとに作成するものです。これを経営状況分析機関に提出することで、財務状況を点数化してもらい、「経営状況分析結果通知書」をもらう必要があります。
経営状況分析機関とは、国土交通大臣の登録を受けた民間の機関のことです。現時点では、以下の機関があります。
- (一財)建設業情報管理センター
- (株)マネージメント・データ・リサーチ
- ワイズ公共データシステム(株)
- (株)九州経営状況分析センター
- (株)北海道経営情報センター
- (株)ネットコア
- (株)経営状況分析センター
- 経営状況分析センター西日本(株)
- (株)NKB
- (株)建設業経営情報分析センター
どこで経営状況の分析を受けても、点数は変わりません。しかし、結果が出るまでの期間や手数料は異なるため、自社にあった機関を選びましょう。
経営規模等評価申請書を提出する
経営状況分析結果通知書を受け取ったら、経営規模等評価申請書をはじめ、必要な書類を提出します。
提出先は許可を受けている行政庁で、提出書類は以下のとおりです。
- 経営規模等評価申請書
- 総合評定値請求書
- 工事種別完成工事高、工事種類別元請完成工事高
- 工事種類別完成工事高付表
- その他の審査項目
- 技術職員名簿
- 経営状況分析結果通知書
- 外国子会社並びに建設業者及び外国子会社についての数値の認定書 ※該当する場合のみ
- 審査手数料印紙貼付書
また、以上に加えて確認書類を添付する必要があります。この確認書類は申請先(国や都道府県)によって内容が異なるため、申請にあたってはホームページや公開されている手引を事前にチェックしておきましょう。
これにより経審に関わる一連の流れは完了です。
経営事項審査(経審)の申請から結果がでるまでにかかる時間
経審は申請してすぐに結果が出るものではありません。申請から結果通知の交付までは、都道府県知事許可か国土交通省大臣許可かにより、期間が異なります。
都道府県知事許可の場合
概ね1ヶ月程度で結果通知が交付される場合が多いようです。
都道府県により若干長短がありますので、時間的な余裕がない場合には事前に申請先の都道府県に確認すると良いでしょう。
国土交通省大臣許可の場合
概ね2ヶ月程度で結果通知が交付される場合が多いようです。
ただし、申請書提出後に追加書類の提出指示等がある場合には、これらを追加提出するまでの期間は審査に含まれず、結果的に交付まで2ヶ月以上の期間を要する場合もあります。
経営事項審査(経審)にかかる費用
経審にかかる費用は、以下のとおりです。
経営状況分析にかかる費用は、機関によっても異なります。また、審査対象となる業種の数によって、経審にかかる手数料は変わってきます。
経営事項審査(経審)の有効期間
経審を一度受けたら、審査基準日から1年7ヶ月が有効期間になります。
通常、審査基準日は決算日です。そのため、決算日から1年7ヶ月間有効となります。
継続して毎年公共工事を受注するのであれば、経審の申請も毎年しなければなりません。一度申請したら終わりではないという点に注意しましょう。
まとめ
経審とはどのようなものなのか、そのメリットや申請の流れについて解説してきました。
まとめると以下のようになります。
- 経審とは建設業者の経営状況や技術力をもとに点数をつけるもの
- 公共工事の入札に参加するために必要なほか、メリット多い
- 経審の申請は前提として建設業許可を受けている必要あり
- 申請にあたって揃える書類は多い
経審を受ける際には、専門の行政書士に相談することをおすすめします。必要な書類が多いだけでなく、専門家であれば点数を上げるためのノウハウを持っています。
また、冒頭でも触れましたが、経審の結果が出るまでには時間がかかります。公共工事を受ける予定があるのであれば、早めに準備しておくようにしましょう。