建設業の働き方改革とは?2024年から変わることは?

「働き方改革」と叫ばれて久しい昨今です。しかし「建設業では2024年に何かある?」「自社にも関係あるのかな?」とお悩みではないでしょうか。

建設業の働き方改革、2024年問題とは、「時間外労働の上限規制」が適用開始されるということです。

この記事では、建設業の働き方改革について解説していきます。

なぜ今、建設業に働き方改革が必要か

2024年から本格的に導入される建設業の働き方改革は、なぜ今必要なのかを解説します。

長時間労働による労災リスク軽減

長時間労働は過労死や精神疾患の発症等、重大な健康障害を引き起こす可能性があります。建設業は他業種に比べ休日数が少ない傾向にあり、納期が逼迫すると残業時間も多くなるなど、長時間労働となりやすい業界です。高所作業など危険を伴う業務もあり、健康確保は大変重要です。

労働者の健康配慮・安全配慮義務違反は、多額の損害賠償を求められるケースもあり、会社にとって大きなリスクとなります。

人材不足解消

少子高齢化が進展し、日本全体の生産年齢人口(=15歳以上65歳未満)は今後もさらに減少の見込みです。そのうえ建設業を支えてきた団塊の世代の高齢化による大量離職は、技術者不足を深刻化させています。

建設業は、社会のインフラを支え、災害復興などに欠かせない重要な役割を担っています。新たに入職する人を増やすこと、離職率を低下させることは急務といえます。建設業界が「働きやすい魅力ある職場」となることが期待されています。

いつから何が変わる?建設業の働き方改革

では2024年から建設業での働き方には具体的にどのような変化があるのでしょうか。以下解説します。最大のポイントは時間外労働の上限適用の部分です。

2024年から建設業も上限規制の対象になる

働き方改革の中で重要課題といえるのが「時間外労働の上限規制」。2024年3月末までは建設業は適用猶予されていますが、2024年4月1日からは他業種と同じ時間外労働の上限規制が適用されることとなります。

時間外労働とは

法定労働時間は1日8時間、1週40時間以下です。

まず「1日8時間」について、「ほとんど残業していない」という会社もあるかもしれませんが、もう1つの基準である「1週40時間」はどうでしょうか?

例えば所定労働時間を7時間とします。月~土曜日まで労働すると、7時間勤務×6日=42時間労働となります。2時間分は法定労働時間の40時間を超過しており、25%の割増賃金の支払いが必要です。建設業は日給制が多く見られますが、日給さえ支給していればOKというわけではないのです。

法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて労働させるときは、時間外労働・休日労働に関する協定(36協定、サブロク協定)を労働者の過半数代表者と締結し、労働基準監督署に届出する必要があります。また、有効期間は1年間のため、36協定は毎年忘れずに届出しなければなりません。

休日労働とは

法定休日の労働

法令上、原則として毎週1回は休日を与えなければなりません。この法定休日に労働させた場合、35%の割増が必要となります。

所定休日の労働

法定休日を日曜日とした場合、土日休みの週休2日制であれば、土曜日を所定休日といいます。

週に1日の法定休日は休めているけれども、もう1日の所定休日が取れないこともあるでしょう。この所定休日に労働したために週40時間を超過した時間は、36協定上では「休日労働」ではなく「時間外労働」のカウントに入ります。25%の割増が必要です。

時間外労働の上限は何時間?

時間外労働の原則は、月45時間、年360時間以内です。以下のような細かい例外規定があります。

  • 繁忙期などは原則通りの時間外労働時間では収まらない場合、特別条項付きで労使協定を結ぶことにより、年に6か月までは月45時間を超えて労働させることができる
  • 特別条項付きでも年間720時間以内(*休日労働除く)が限度
  • 単月では100時間未満(休日労働含む)
  • 2~6か月平均で80時間以内(休日労働含む)

これまでは実質は青天井だったため、大きな違いです。

ただし建設業の例外として、災害時における復旧・復興の事業については、当分の間、「単月100時間未満、2~6か月平均で月80時間以内」の要件は適用されません。

2019年から始まった働き方改革

働き方改革は2019年より順次始まっています。時間外労働の上限規制以外の内容についても対応できているか、主なポイントを確認しましょう。

年次有給休暇の5日取得義務(企業規模問わず2019年4月~)

年次有給休暇を10日以上付与された労働者には、年に5日以上確実に取得させなければなりません。本人の希望を聴取し、会社が時季を指定し取得させることとなりました。

同一労働同一賃金(大企業2020年4月、中小企業2021年4月~)

正規雇用(無期雇用フルタイム)と非正規雇用(パートタイム労働者、有期雇用労働者等)との待遇に不合理な差を設けることが禁止されました。

実は2023年問題もあり

中小企業すべて、2023年4月より60時間超の時間外労働の割増率が25%から50%へ引き上げられます。大企業ではすでに2010年4月から適用され、中小企業は適用が猶予されていました。いよいよ2023年3月31日で猶予措置が終了します。

働き方改革実現のためにどうすべきか

建設業界の働き方改革は、待ったなしでまもなくスタートします。具体的に何から始めていくべきかをピックアップします。

まずは労務管理の点検を

まず現状を正確に把握するところからスターとします。労働時間を正しく把握できているか点検しましょう。

現状の時間外労働、休日労働の把握

時間数を集計し、上限規制と比較してみましょう。超過していればもちろんですが、超過していない場合もさらなる削減に努めていきましょう。

労働時間制度の見直し検討

変形労働時間制の適用により、時間外労働の削減へつながることがあります。
変形労働時間制とは、1年単位、1か月単位など一定期間を平均して週40時間となるように調整し、特定の日や週に法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。閑散期には休みを増やし繁忙期には多く働くなど、効率的に労働時間を分配することが可能になります。
特別な制度ですので、就業規則の定めや労使協定の締結、届出が必要です。

年次有給休暇の取得状況

本人任せにしていると、なかなか休暇取得が進まないことがあります。会社から時季指定する場合のルールなど、就業規則に定めておきましょう。
有給休暇を何日付与し、何日取得したか、労働者ごとに「有給休暇管理簿」の作成が義務付けられています。有給休暇の取得状況を定期的に確認しましょう。

給与、手当の確認

正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇に差がないか、就業規則、給与規程を点検します。差があった場合はその理由を洗い出し、場合によっては制度、規程の見直しを行います。

例えば「正社員には通勤手当支給あり、有期雇用者には支給なし」としていた場合、その理由が合理的なものか考えてみましょう。

国土交通省「働き方改革加速化プログラム」

建設業は重層下請構造という特殊性もあり、各社の努力だけでは限界があることもあります。国土交通省「働き方改革加速化プログラム」は、官民一体となって建設業の働き方改革を加速させる、3つの分野の施策をパッケージとしてまとめたものです。

働き方改革加速化プログラム

週休2日制の推進

長時間労働の是正のため、公共工事で率先して週休2日工事の適用拡大が始まっています。
「適正な工期設定等のガイドライン」を改訂し、受発注者双方が協力して長時間労働とならないような適正な工期設定の取り組みを進めています。

適正な工期設定等のガイドライン

建設キャリアアップシステム(CCUS)

技能者の資格、社会保険加入状況、現場の就業履歴等を業界横断的に登録・蓄積する仕組みです。2019年4月に本格実施されてから普及拡大が進んでいます。技能と経験にふさわしい処遇(給与)の実現、社会保険加入の徹底に向けた環境整備を目指すものです。

生産性向上

中小企業のICT活用を促すため、公共工事の積算基準等の改善が行われています。生産性の向上に取り組む企業を後押しするものです。工事関係書類の多さも大きな負担となっていたため、基準類の改定も進められています。

働き方改革は取り組むべきか

国が主導する働き方改革ですが、建設会社ではこれに取り組むべきなのでしょうか。取り組んでいく必要がある、取り組まざるを得ない、というのが本音でしょうか。

働きやすい環境づくりで人材確保

働き方改革の目指すものは、労働者が個々の事情に応じた多様な働き方を実現することです。「ワークライフバランス」を重視した働き方が認識されている今、働きやすい環境づくりに取り組むことは、労働者の定着や新規雇用拡大へつながっていくのではないでしょうか。

上限規制に違反するとどうなる?

業界全体の就労状態の健全化として目指すべき方向を示したものであるほか、違反すると一部罰則規定が設けられえいる部分もあります。

時間外労働の上限規制、割増賃金の支払いに違反した場合

6箇月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

年次有給休暇の5日取得義務に違反した場合

30万円以下の罰金が科されます。未取得者1人につき1罪として取り扱われるため、例えば未取得者が3人いた場合には最大30万円×3人分の罰金になる可能性があります(100人だったら最大30万円×100人)。

社会保険労務士にサポートを依頼すべきか?

働き方改革に関する様々なチェック、整備体制構築は外部の専門家等にサポートを依頼すべきか、自社内のリソースで取り組むべきかの判断基準をお示しします。

労務管理のノウハウがあれば自社での対応可能

労務管理にある程度慣れている事業主、スタッフがいらっしゃる場合には、自社で対応可能でしょう。36協定の届出は、厚生労働省HPから様式をダウンロードし作成でき、現在はこういった手続きもe-govというシステムを通じて電子申請することができます。

ノウハウや時間的な余裕がなければ依頼を検討

自社にノウハウがない、時間的な余裕がなくサポートが必要な場合には社会保険労務士に依頼することを検討されるとよいでしょう。基本方針を一緒に検討し、アドバイスを受けながら運用するのも一手です。

依頼するとその他のメリットも

労務管理に限らず、社会保険、労働保険、事業主の労災保険特別加入など、バックオフィスでの疑問は意外と多く発生するものです。外部の専門家に相談するのも検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

建設業の働き方改革、2024年問題とは、時間外労働の上限規制が適用開始されるということです。すでに始まっている年次有給休暇5日の確実な取得、生産性向上や業務の効率化を合わせて推進することは、2023年4月からの60時間超の時間外労働の割増賃金率アップ対策にもなります。時間外労働の削減は一朝一夕にはいかないでしょう。まずはできることから少しずつでも、取り組みを始めてみることが大切ですね。

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