「自社でやっている会計処理や決算申告の負担が大きい……」
「税金に関するアドバイスがほしいけど、誰に頼んでいいかわからない……」
建設業を営んでいて、以上のような悩みをお持ちの方は、案外多いのではないでしょうか。このような時に頼りになるのが、建設業に強い税理士です。
信頼できる税理士と顧問契約を結ぶことで、会計処理の負担を減らす以上のメリットを得られる場合もあります。
そこで今回は、建設業に強い税理士について解説していきます。選ぶポイントや料金相場を事例に沿ってご紹介します。顧問契約のメリットについても一緒に見ていきましょう。
建設業に強い税理士の概要と選ぶポイント
そもそも「建設業に強い税理士」とはどういう税理士を指すのでしょうか。
建設業界の会計を熟知している
建設業に強い税理士は、建設業界特有の会計を熟知しています。
建設業では特有の「建設業会計」という会計処理が適用されています。
工事の着工から完成品を引渡すまでに長い期間を要する場合もあり、このように独特の制度が存在しているのです。
特有の会計処理や建設業界の商慣習について詳しければ、スムーズに会計処理を進めることもできます。税理士を選ぶにあたっては、建設業界の実情について熟知しているかどうかも、重要なポイントになるでしょう。
行政書士も在籍している等、建設業許可関連も任せられる
税理士業務だけでなく、行政書士業務も任せられるのは、重要なポイントです。
建設業では、頻繁に許可まわりの手続きを行う必要があります。例えば、以下のような申請・届出です。
- 建設業許可の取得・5年ごとの更新申請
- 許可業種の追加申請
- 毎年提出する決算変更届
- 役員や住所等が変わった際の変更届
- 公共工事受注のための経営事項審査(経審)や入札参加資格申請
以上で挙げたほかにも、建設業許可では様々な手続きが必要になります。
建設業に強い税理士であれば、こうしたノウハウを持つ行政書士と繋がりがあったり、同じ事務所に在籍している場合も多いです。法的な手続きの面からも、手厚いサポートが期待できます。
融資サポートなど資金調達にも強い
建設業界を熟知した税理士であれば、融資サポートなどの資金調達にも強いことも抑えておくべきポイントの一つです。
建設業では、工事が完了するまでは、請負代金が入ってこないケースがありえます。しかし、そもそも工事を受注して施行開始するために資金が必要になる場合も多いかと思います。
そんなとき、スムーズに融資を受けることができれば安心ですよね。建設業に強い税理士であれば、そうした資金調達の実現についても心強い味方になってくれます。
実績がある(公開している)
税理士を選ぶ際には、実績があるかどうかという点もポイントとなります。
当然ですが、実績がある税理士はそれだけ場数を踏んでいるということです。経験・実績がある分、ここまで説明した建設業会計や資金調達にも精通してると考えられます。
そうした税理士のなかには、実績をWeb上等で公開している場合も多いです。それまでどんな実績があり、経験豊富なのかという部分も着目すべきポイントだと言えます。
定期的なアドバイスをしてくれる
経営状況を把握したうえで定期的にアドバイスをしてもらえることも、重要なポイントとなります。
先程も触れたように、建設業では特有な会計処理を行わなければいけません。このことからもわかるように、建設業は他の業種とも違い、受注から仕事完成までの行程が複雑になっています。
また、工事の種類などによって異なるものの、大きなお金が動くことも建設業の特徴の一つです。
よって、その時々の財務状況を正確に把握しながら、見通しの立てにくいなかでも先々を考えて資金繰りをしていかなければなりません。
その点、建設業に強い税理士に定期的なアドバイスをもらえるということは、大変心強いと言えます。
建設業に強い税理士に依頼できること
建設業に強い税理士には、以下のようなことを依頼できます。
税理士顧問
税理士は年間を通して経理、記帳等をサポートしていくため、「年間の顧問契約」というかたちで依頼する場合が多いです。年間通して依頼するため、連続した帳簿の管理や資金繰り、経営状況の確認などを相談することができるようになります。
税務調査への対応
年間の売上や経費などをまとめて確定申告し、納税することになりますが、事業をしていると定期的に税務調査というイベントがあります。税務署が確定申告の内容が正しいかどうか、事業者に立ち入り調査をすることです。
顧問契約をしている税理士は、基本的にこの税務調査に立ち会って、事業者(社長)と税務署とのやり取りがスムーズにいくようサポートしてくれます。もし専門的な税務上の解釈について説明が必要な場合には、税理士に代わりに税務署職員と話し合ってもらうことも期待できるでしょう。
納税額や法人化のシミュレーション
事業活動を行うと、利益を計上している限り納税が発生します。いつどのくらいの納税額が発生するかをシミュレーションしておかないと、突然多額の現金が必要になり経営を圧迫することになるため、納税額のシミュレーションは欠かせません。
また、個人事業主の場合は納税額をシミュレーションすると「法人化した方が納税額の上では合理的」という状況になることがあります。
このような納税額や法人化収支のシミュレーションは顧問税理士に相談するのが一番やりやすいでしょう。
資金繰りの相談
建設業は請負工事が主なため、一旦プロジェクトが始まると先払いで多額の資金が必要になることがあります。外注費や材料費など、まだ入金がない状態で支払が先行するケースも多いと思います。
先々の工事受注や資金ニーズに対応することを資金繰りと言いますが、月ごとの収支を確認している税理士は資金繰りの相談や、金融機関への融資相談にも対応しています。
建設業に強い税理士に依頼できないこと
建設業に強い税理士であっても、以下のような業務は依頼できない場合が多いです。それぞれの専門家に相談することになります。
なお、このコンテンツを運営しているファーストグループは税理士、行政書士、社会保険労務士が複数在籍している綜合オフィスのため、以下の手続きも全てまとめて依頼することが可能です。
建設業許可や経営事項審査、入札参加資格などの許認可申請や管理
建設業ではほぼマストとなる建設業許可や、公共工事のために必要な経営事項審査(経審)、入札参加資格の取得、管理などは税理士が行う業務ではないため、依頼できません。
行政書士の中でも、建設業許可や経審、産廃業許可を専門にしている事務所に依頼することになります。
労働保険、社会保険の手続き
社員の入退社が発生した場合に必要な手続きです。雇用管理全般と言えますが、税理士は対応していません。
これらの手続きは社会保険労務士に依頼することになります。
現場労災の特別加入
建設業では、中小企業や個人事業主(一人親方)などの代表者や役員が工事現場に入るケースが多くあります。代表者、役員は労災保険の対象外のため、「労災保険の特別加入」制度を使って加入することをご検討されることがあるかもしれません。
現場労災の特別加入も、税理士では対応できません。地元の商工会議所や、労働保険事務組合などに依頼することになります。
建設業に強い税理士の相場
建設業に強い税理士を見つけた場合、税務相談や決算業務を依頼する場合の料金相場をまとめています。
実際の顧問料の事例をご紹介!
税理士に支払う顧問料は、売上や記帳の状況等により、顧客によって異なるのが一般的です。ここでは、顧問料の事例をいくつかご紹介していきます。
事例1 法人
顧問料月額3万円、決算業務10万円
概ね3ヶ月に1回ごとの打ち合わせを行うご契約となりました。記帳は自社でされるということで、打ち合わせに併せて記帳のレビューを行う形式をとっています。
期末時の税務申告書の作成のほか、一般的な税務に関する相談も含めた顧問契約です。
事例2 法人
顧問料月額4万円、決算業務12万円
こちらの事業者様も3ヶ月に1回程度の打ち合わせでのご契約です。これまでは帳簿を手書きにより管理していたため、記帳も含めたご依頼でした。
事例3 個人事業主
顧問料月額2.5万円、決算業務6万円
事業主様が打ち合わせの時間を取りにくいということで、ご訪問などはせず、定期的なメールでの打ち合わせを行うご契約になりました。
記帳は長らくご自身で行われていたということで、メールでのやりとりにより記帳のレビューを行う形をとっています。
顧問契約のメリット
税理士と顧問契約することは、スポット(単発)で業務依頼するよりどのような面でメリットがあるかまとめてみました。
分からないことがあればすぐに税理士に質問ができる
顧問契約のメリットとして、分からないことを専門家である税理士に質問できるということが挙げられます。
税金や資金繰り、補助金や助成金といった制度については、知識があるかどうかで明暗を分けることが多くあります。
一例としては、節税をすることにより納める税金を抑えられるというようなものです。
顧問契約では、定期的な訪問やメール等でのやりとりを行うことが一般的です。そのため、上記のような節税に関するような質問に対しても、専門家視点でアドバイスが受けられます。
スピーディーに対応してもらえる
スピーディーな対応も、顧問契約のメリットの一つです。
あらかじめ顧問契約をしていなければ、分からないことやアドバイスを受けたいときは、税理士を探し、契約を結ぶ必要があります。
急を要する場合などは、その都度契約をしている時間がないことも多いでしょう。
一方で、顧問契約は、年単位で契約を行うことが多いです。会計処理に関する助言をしてもらうことについて、事前に契約をしていることになります。
その都度相談ごとに契約を結ぶより、顧問契約の方が急な事態への対応も容易です。
毎月の会計処理を代行してもらえる
顧問契約によって、毎月の会計処理を代行してもらえることもメリットとして挙げられます。
毎月の会計処理は自社で行っているという場合も多いかと思われます。しかし、事業の規模が大きくなるにつれ、作業にかかる負担は大きくなってしまいます。
顧問契約をしている税理士に会計処理を代行してもらうことで、こうした作業にかかる時間を削減でき、本業に注力できるようになります。
また、専門家に依頼することで以下のようなメリットもあります。
- 正確な会計処理のため、安心して決算申告できる
- 顧問契約は継続して長期間の依頼が一般的なため、財務状況などを把握したうえでの専門的なアドバイスがもらえる
ノウハウを持つ税理士に依頼することで、会計処理を代行してもらえる以上のメリットもあります。
まとめ
建設業に強い税理士を選ぶポイントや、顧問契約のメリットについて解説してきました。
会計処理などは自社で対応しているという方もいらっしゃるかもしれませんが、専門家に依頼することで、負担軽減以上のメリットもあることがわかっていただけたかと思います。
建設業は大きなお金が動く業種でもあり、いつでも相談できる専門家がいるのは心強いですよね。
また、税理士と顧問契約を結ぶ等して日々の会計処理を任せるのであれば、建設業に強い税理士がおすすめです。
建設業では許可まわりの申請・届出に関わる行政書士や、社会保険・労務管理に関わる社会保険労務士等、様々な専門家の視点が必要になります。建設業に強い税理士は自身がノウハウを持つのはもちろん、そうした横の繋がりも豊富な場合が多いです。
今回ご紹介したポイントも参考にしていただきながら、ぜひ自社に合った顧問税理士を探してみてください。