建設業を営んでいると、様々な法令に違反しないよう気をつける必要がありますよね。
そのなかで、以下のような疑問を持たれる方も多いかと思います。
「建設業法に違反するとどんな罰則があるのか?」「どんな行為をすると罰則の対象となるのか?」
そこで今回は、建設業法に違反するとどんな罰則があるのかについて解説します。罰則以外の処分やデメリットについても、具体的に対象となる行為とともに詳しく見ていきましょう。
建設業法に違反するとどんな罰則がある?
では建設業法に違反することで受ける可能性のある罰則について見ていきましょう。
建設業法違反は懲役や罰金・過料の対象
建設業法に違反することで、懲役や罰金、過料の対象になります。
違反の種類によって、以下のような罰則があります。
- 3年以下の懲役または300万円以下の罰金
- 6か月以下の懲役または100万円以下の罰金
- 100万円以下の罰金
- 10万円以下の過料
それぞれにどんな行為が対象になるのか、後ほど詳しく解説します。
許可取消や営業停止等の監督処分が行われる場合も
懲役や罰金のほかに、監督処分がなされる場合もあります。
監督処分とは、法令違反等に対して監督行政庁が発する命令のことです。こちらも違反の種類や程度によって、以下のような種類があります。
建設業法違反の罰則の種類
建設業法に違反すると科される罰則には、以下のような種類があります。
- 3年以下の懲役または300万円以下の罰金
- 6か月以下の懲役または100万円以下の罰金
- 100万円以下の罰金
- 10万円以下の過料
いずれも、「知らなかった」「ついうっかり」では済まされない行為です。ここからは、それぞれどんな行為が対象になるのか、詳しく見ていきましょう。
3年以下の懲役または300万円以下の罰金
建設業法に違反した際の罰則としては、一番重いものになります。
3年以下の懲役または300万円以下の罰金を科されるのは、以下の行為をした場合です。
- 無許可で軽微な工事以外の工事を請け負った
- 特定建設業許可を受けずに一定金額以上で下請契約を締結した
- 営業停止処分がなされているのに、違反して営業をした
- 虚偽や不正の事実によって許可や許可の更新を受けた
無許可営業や虚偽・不正によって許可を受ける等の行為が対象になっています。
なお、これらの行為をした場合は、情状により懲役及び罰金を併科できると定められています。
6か月以下の懲役または100万円以下の罰金
こちらも懲役の罰則があり、最初に解説したものの次に重い罰則となります。
6か月以下の懲役または100万円以下の罰金が科される行為は、以下のとおりです。
- 許可申請書や添付書類に虚偽の記載をして提出した
- 変更届等を提出しない、または虚偽の記載をして提出した
- 許可の基準を満たさなくなったとき、欠格要件に該当するに至ったときに必要な届出を提出しない
- 経営状況分析や経営規模等評価の申請書等に虚偽の記載をして提出した
必要な変更届を提出しなかったり、虚偽の記載をして提出した場合などが当てはまります。また、上記の行為についても、情状により懲役及び罰金を併科できるとの規定があります。
100万円以下の罰金
100万円以下の罰金を科される行為としては、以下のものが挙げられます。
- 工事の現場に主任技術者、監理技術者を置かなかった
- 許可の効力を失った後、または営業停止、許可取消処分の後、2周間以内に注文者に通知をしなかった
- 登録経営状況分析機関、国土交通大臣、都道府県知事に必要な報告をしない、資料の提出をしない、虚偽の報告や虚偽の資料を提出した
- 国土交通大臣、中小企業庁長官に対し必要な報告をしない、または虚偽の報告をする
- 国土交通大臣、中小企業庁長官の要求に対し検査を拒む、検査を妨げる、または検査を忌避する
現場に必要な技術者を置かない、必要な報告をしない等の行為が対象になっています。
10万円以下の過料
罰則が科される中では、比較的軽微な違反が対象になります。10万円以下の過料が科される行為は、以下のとおりです。
- 廃業等の届出をしない
- 建設工事紛争審査会からの調停の出頭の要求に応じない
- 店舗及び現場に必要な標識を掲げない
- 許可を受けていないのに許可業者であると誤認させるおそれのある表示をする
- 必要な帳簿を備えない、記載すべき事項を帳簿に記載しない、虚偽の記載をする、帳簿もしくは図書を保存しなかった
廃業届の提出を怠ったり、必要な帳簿を備えない等の行為が対象になっています。店舗や現場に必要な標識を掲げないことも罰則の対象となっているので、注意しましょう。
建設業法や法令違反に対する監督処分の種類
建設業法やその他の法令に違反することで、監督処分がなされる場合もあります。
監督処分としては、以下のような種類が挙げられます。
違反の程度によっては営業の停止であったり、最悪許可が取り消されてしまうこともあります。それぞれどのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。
指示処分
建設業法や他の法令違反があると、監督行政庁から法令違反等を正すための指示処分がなされる場合があります。
指示処分は比較的軽微な違反に対して行われることが多いです。言い換えれば、監督行政庁から注意をうけるということになります。
この指示処分に従わない場合や、違反した場合は次にご説明する営業停止処分の対象になることもあるので、注意しましょう。
営業停止処分
文字通り、営業の停止を命じられることです。以下のような場合、営業停止処分がなされることになります。
- 比較的重大な違反の場合
- 指示処分に従わない場合、または指示処分に違反した場合
監督行政庁が違反の程度によって、停止期間の長さを判断することになります。
なお、この営業停止処分を無視して営業を行うと、次の許可取消処分の対象になる場合もあります。
許可取消処分
こちらも文字通り、建設業許可を取り消す処分になります。監督処分のなかでは、もっとも重い処分と言えるでしょう。
以下のような場合が対象です。
- 不正な手段で建設業の許可を受けた場合
- 営業停止処分に違反して営業
建設業法に違反することで生じるその他の影響
建設業法に違反することで、罰則を科され、監督処分がなされる以外のデメリットもあります。例えば、欠格要件等に該当することになるので、建設業許可の要件を満たせなくなる可能性があります。
その後5年間にわたって建設業許可を取得できなくなる場合もあり、営業活動自体が難しくなることも考えられます。
また、監督処分を受けた場合には、「国土交通省ネガティブ情報等検索サイト」に処分を受けた事業者や処分の内容が掲載されることとなっています。
建設業法やその他の法令に違反したことが誰に目からみても明らかになるため、営業に与える影響は少なくないと言えるでしょう。
建設業法違反に関する事例
建設業法に違反することでどのような影響があるのか、実際にあった事例をご紹介します。
概要としては、「建設業法施行令第3条に規定する使用人」である者が、欠格要件に該当しながらも、その報告を怠っていたという事案です。結果として、以上の事実が社内で判明したのち、建設業許可を自主的に廃業しました。
建設業許可の自主廃業および再申請について (2022年9月29日): プレスリリース | NEC
先にも解説したように、建設業許可を廃業することで、再度許可を受けるまでは無許可状態になり、軽微な工事を除く建設工事はできなくなります。
また、違反状態にあったという事実を公開することで、今後の営業活動に与える影響は計り知れません。
まとめ
建設業法違反による罰則や処分について解説してきました。
法令違反により、懲役や罰金、過料の対象となるほか、最悪の場合許可取消処分がなされることがわかっていただけたと思います。また、これら以外にも営業に大きな影響を与えることは明白です。
今回解説した罰則の対象となる行為は「ついうっかり」「違反とは知らなかった」という理由でも起こりうるものです。
コンプライアンスが重視される現在、小さなミスが営業に影響を与えることもあります。
常にコンプライアンス意識を高く持つことは当然ですが、お困りの際はすぐ建設業専門の行政書士に相談することを強くおすすめします。