税制面等のメリットから、個人事業主からの法人化を検討されている方は、少なくないのではないでしょうか。
その際に確認しておきたいのが、建設業許可に関する手続きです。実は、近年法改正があったこともあり、選べる選択肢が増えました。
そこで今回は、法人成りする際の建設業許可取得について解説していきます。
個人事業主から法人への法人成りをするには、どのような申請が必要なのでしょうか。必要な書類や気をつけるべき点にも触れながら、詳しくまとめていきます。
法人成りする場合の許可申請手続きは?
法人成りする場合の手続きは複数のパターンがあります。合理的で現実的な方を選択していただくことになります。
法人成りで許可を引き継ぐ方法は二種類ある
個人事業主から法人成りするとき、建設業許可を受ける方法には以下の二種類あります。
- 法人で許可を取り直す
- 法人に許可を承継する方法
それぞれ必要になる手続きや要件などが異なります。そのため、それぞれの特徴を理解したうえで、あらかじめどちらの方法にするか選択しておく必要があります。
いずれの方法にしても「揃えるべき書類が多い」 「許可を受けるまでのスケジュールを厳密に管理しなければならない」という点からも手続きは比較的難しいものになっています。
また、経営事項審査等にも関わってくる可能性があるため、一度専門家にご相談してみてはいかがでしょうか。
当事務所は建設業許可に特化した事務所です。
建設業許可の承継についてのお悩みはお気軽にお問い合わせください。
法人で許可を取り直す方法
個人事業主で受けていた許可については廃業し、新しい法人では新規で許可を受ける方法です。
法人成りの際の手続きとして、従来からある方法です。廃業と新規許可の手続きを同時に進める必要があったり、無許可期間ができたりとデメリットもあります。
この点は、後ほど詳しく解説していきます。
個人から法人に許可を承継する方法
個人事業主として受けていた建設業許可を、法人に承継する方法もあります。
個人事業主から法人に対して事業譲渡というかたちをとります。こちらは、令和2年10月の改正によってできるようになった、新しい制度です。
あらかじめ許可行政庁の認可が必要など、細かい要件がいくつかあります。また、一般的には事前に許可行政庁と打ち合わせが必要であったりと、手続きも込み入ったものであるという点が特徴的です。
当事務所は建設業許可に特化した事務所です。
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廃業して新規で許可を受ける方法
まずは個人事業を廃止し、新たに法人で許可を取り直す従来型の方法を検討します。
一般的には同時進行で申請
従来どおりの手続きで法人成りをする場合は、以下の2つの手続きを同時進行でするのが一般的です。
- 個人事業主として受けていた建設業許可の廃業
- 法人として新規で建設業許可の取得
手続自体は同時に進めますが、新規で許可を受けるまでには、許可行政庁での審査のためにだいたい1ヶ月ほどの時間がかかります。
これにより、廃業してから許可を受けるまでは、建設業許可を受けていない無許可状態になってしまいます。
「新規での許可がおりてから、個人事業主で受けていた許可を廃業すれば、無許可期間は生じないのでは?」
という考え方もあるかもしれませんが、一般的には使えない方法です。なぜなら、個人事業主の許可と法人の許可に重複が生じてしまうからです。
許可の要件として、会社に常勤している専任技術者や常勤役員(経管)が必要になります。しかし、個人事業主と法人で専任技術者や常勤役員(経管)を兼務していては「常勤している」とは見てもらえないということです。
1ヶ月程度の無許可期間が生じてしまう
廃業してから許可を受けることになる以上、どうしても1ヶ月程度の無許可期間が生じてしまいます。
無許可の状態では、500万円以上(建築一式工事では1500万円以上)の工事を請け負うことができません。許可を受けずにこれらの工事を請け負ってしまうと、建設業法に違反してしまうことになります。
法人にて許可を取り直す方法で申請をするのであれば、この点には特に気をつけておきましょう。
個人から法人へ許可を承継する方法
法改正で新たに生まれた手続きで、個人事業での許可を廃止せずに法人に引き継ぐ方法です。
事前に許可行政庁との打ち合わせが必要
個人から法人へ許可を承継する方法の場合、一般的には許可行政庁と打ち合わせをすることになります。
これは後ほど詳しくご説明しますが、承継の事実が発生するまでに認可を受ける必要があります。こうした手続きをスムーズに進めるためにも、手引き等には「事前に相談してください」と記載している場合がほとんどです。
特有の必要書類や細かい要件もあるため、手続きの進め方について事前にしっかりと確認しておく必要があります。
承継に必要な書類
許可を承継する場合に必要な書類は、以下のとおりです。
- 認可申請書
- 譲渡及び譲受け認可認可申請書
- 役員等の一覧表
- 営業所一覧表
- 専任技術者一覧表
- 工事経歴書
- 直前3年の各事業年度における工事施工金額
- 使用人数
- 誓約書
- 常勤役員等証明書
- 常勤役員等の略歴書
- 健康保険等の加入状況
- 建設業法施工令第3上に規定する使用人の一覧表
- 許可申請者の住所、生年月日等に関する調書
- 登記されていないことの証明書
- 身元証明書
- 定款
- 株主調書
- 財務諸表
- 登記事項証明書
- 営業の沿革
- 所属建設業者団体
- 納税証明書
- 主要取引金融機関名
- 誓約書
- 譲渡及び譲受けに関する契約書
- 株主総会の議事録など
- 許可要件の確認資料
一通り挙げましたが、詳しくは申請先の情報を確認してみてください。
求められる書面は新規許可の申請と似ており、多くの書類を準備しなければならないことがわかるかと思います。
当事務所は建設業許可に特化した事務所です。
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建設業許可を承継する要件
必要な書類を準備するほかにも、満たさなければならない要件がいくつかあります。
- 承継の事実が発生する前に申請し、認可を受けること
- 建設業の全部を法人に承継させること
- 法人でも許可の要件を満たしていること
建設業許可を承継する際は、これらの要件をクリアしなければなりません。以下に一つずつ解説していきます。
承継の事実が発生する前に申請し、認可を受けること
個人事業主から法人への承継の事実が発生する前に、認可を受けることになります。裏を返せば、事業を承継する事実の発生後には認可を受けることができません。
おおむね承継が発生する1ヶ月前には認可申請を完了させておく必要があります。自治体により異なるので、事前に申請先HPを確認しておきましょう。
このように、あらかじめ認可を受けなければならないことからも、事前に入念な準備の必要性が伺えます。
建設業の全部を法人に承継させること
個人で営んていた建設業については、全て法人に承継させる必要があります。
例えば、個人で左官工事と土木工事を営んでいた場合は、法人にはこの2つを承継させる必要があります。「法人化してからは左官工事だけやるから」といって、土木工事だけ承継しないということは許されません。
以上のように、一部だけを承継しない場合は、認可申請の前に一部廃業し、残ったもの全てを承継することになります。
法人でも許可の要件を満たしていること
承継先となる法人でも、以下のように建設業許可の要件を満たしている必要があります。
- 適正な経営体制
- 専任技術者
- 誠実性
- 財産的基礎等
- 欠格要件等
法人でもこれらの要件をクリアできているのか、事前に確認しておきましょう。
許可承継のメリット
従来どおりの方法と比べて、許可を引き継ぐという点でいくつかのメリットがあります。
- 従来の方法にあった無許可期間がない
- 許可番号が引き継がれる
- 新規申請手数料の9万円が不要(認可について手数料はなし)
許可を承継することになるため、許可番号に変更はなく、1ヶ月程度の無許可期間もありません。手続き自体は複雑ですが、その分メリットも多いです。この点も踏まえ、法人成りの手続き方法を選ぶ際は、自社に合ったものを選ぶようにしましょう。
当事務所は建設業許可に特化した事務所です。
法人成りの手続きや承継手続きなどどの手続き方法を選べばよいか分からないという方は、一度ご相談下さい。
許可を引き継ぐ手続きは自分でできる?
建設業許可を引き継ぐ手続きは難しいでしょうか。自分でもできるものか検討してみます。
専門の行政書士へ依頼するのがおすすめ
法人成りに伴う手続きについては、専門の行政書士へ依頼することをおすすめします。
2つの方法についてご紹介してきましたが、いずれの方法にしても手続きは比較的難しいものになっています。
- 揃えるべき書類が多い
- 許可を受けるまでのスケジュールを厳密に管理する必要がある
また、社会保険に関する事など、社会保険労務士をはじめとする他の専門家とも連携して行うことで、スムーズに手続きを進められることもあります。
許可取得までをスムーズにするという点でも、専門家への依頼にはメリットがあると言えるでしょう。
依頼することで申請を代行するだけでないメリットもある
専門家に依頼することで、申請を代行するだけに留まらないメリットもあります。
今回解説してきたように、法人成りに伴う手続きには2パターン挙げられます。それぞれ特徴があり、自社に合ったものを選ばなければなりません。
その点、専門家目線でアドバイスが受けられるというのは大きなメリットです。
経営事項審査等にも関わってくる可能性があるため、一度専門家にご相談してみてはいかがでしょうか。