建設業の許可申請で、実務経験証明書という名前を目にしたことはありますか?
何のための証明書で、どのように使うのか、わかりにくいという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、建設業の実務経験証明書とは何か、その内容や必要な書類をまとめていきます。
実務経験証明書とは
実務経験証明書とは何か
建設業許可に必要な専任技術者を、実務経験によって証明するために必要となるのが、実務経験証明書です。専任技術者になるためには、以下のうち、いずれかの要件をクリアしなければなりません。
- 対応する国家資格を持っている
- 指定学科の卒業+実務経験がある
- 対応する国家資格+資格取得後の実務経験
- 実務経験がある
実務経験証明書はこのうち、2〜4によって専任技術者になるために必要になります。
どんな時に必要になるか
建設業許可を新規で取得するとき、すでに許可を持っていて専任技術者が変わるときに、必要になる場合があります。
新しい専任技術者を実務経験で証明しようとする際に、実務経験証明書が必要になってきます。
逆に、新しく専任技術者になる方が対応する国家資格を持っていれば、必要ありません。
証明しなければならない期間
原則として、10年間の実務経験を証明しなければなりません。
ただし、指定学科の修了や資格を持っていることにより、以下の表のように5年・3年などと証明期間が短くなる場合もあります。
指定学科の修了とは、例えば高等学校や高等専門学校、大学の指定された学科を修了することです。
作成する前に確認すべきこと
実際に実務経験証明書を作成する場合には以下の項目を確認してください。
必要な分の経験年数はあるか
まず前提として必要なのは、対応する業種の10年(または5年・3年)の実務経験です。
例えば大工工事の建設業許可を取得する場合は、大工工事の実務経験が必要になります。
裏を返せば、管工事の経験が10年あっても、大工工事の実務経験として使うことはできません。
また、指定学科の卒業によって証明する経験年数が変わることにも要注意です。
実務経験証明書を作成する場合は、卒業した学校も含め、ご自身の経歴を振り返るところからはじめます。
証明に必要な書類はあるか
実務経験を証明するために必要な書類があるかどうかも、確認すべきことの一つです。
実務経験を証明するために、それを客観的に確認できる資料も求められます。
詳しくは後ほどご説明しますが、必要な書類は自治体によっても異なります。
申請先の自治体が何を求めているか、工事の注文書や請負契約書は保管しているかなどを確認しておきましょう。
また、10年の実務経験を証明するといっても、その経験年数の数え方も自治体により異なります。
これによって必要な書類の数が変わることにもなりますので、注意が必要です。
建設業許可の実務経験証明書の作成は時間と労力がかかります。
本業が忙しくなかなかご自身で用意するのは難しそうという場合は専門家への相談をおすすめします。
当事務所は建設業許可に特化した事務所ですので、実務経験証明書の作成だけでなく、建設業許可や専任技術者の変更届など申請や届け出をそのままお任せいただけます。
建設業許可の実務経験証明書の作成にお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。
実務経験の数え方
実務経験の数え方、カウントには以下の注意点があります。申請する先の自治体、都道府県などによって個別の考え方があるので、事前に確認すると良いでしょう。
数え方は自治体によって異なる
実務経験の数え方は、申請先の自治体によってそれぞれ違いがあります。大きく分類すると、だいたい以下の3つのパターンに分けられます。
- 代表の工事を1件挙げることで、その年は経験があったものとする
- 工事と工事の期間が12ヶ月未満であれば、連続して経験があったものとする
- 実際の工期で計算する
詳しくは、各自治体のホームページなどを確認してみましょう。
建設業の実務経験は客観的に証明する必要がある
建設業許可においての実務経験は、客観的な資料で証明する必要があります。
つまり、いくら正確に実務経験証明書を作成しても、その裏付け資料がなければ証明にならない、ということです。
これは自治体によって求められる資料が違うだけでなく、実務経験の数え方によっても変わってくる点に注意しましょう。
たとえば、実務経験を実際の工期で計算する場合には、証明する期間全ての書類が必要になります。
もし10年証明が必要であれば、120ヶ月分の工事を証明する書類を集めなければならないことになります。
実務経験の証明に必要な書類
実務経験を証明するために、裏付けになる書類などが必要になる場合があります。以下で確認します。
工事実績があることを証明する資料
実務経験の証明として、実際に工事の実績があることの裏付け資料が必要です。
実務経験は、その経験を積んでいたところに証明をしてもらうことになります。以前働いていた会社や、個人事業主としてご自身で証明することもあるかもしれません。
そして、その証明してくれる人・会社(=証明者)が、建設業許可を持っていたかどうかによって、必要な資料も大きく異なります。
なお、一般的に求められる資料を挙げますが、細かい部分は自治体によって異なる場合があります。
詳しくは、申請先のホームページや手引きを参考にしてみてください。
証明者が建設業許可を取得していた場合
証明者が建設業許可を取得していた場合は、必要な資料は比較的シンプルです。
対応する業種(大工工事であれば大工工事のもの)について、以下の書類の写しが必要になります。
許可申請やそれに関わる届出などの写しが、そのまま資料として使えます。証明者が建設業許可を取得していたのであれば、まず過去に提出した書類が保管されているかを確認することになるでしょう。
証明者が建設業許可を取得していなかった場合
証明者が建設業許可を取得していなかった場合は、それ以外の書類によって工事実績を証明しなければなりません。
例えば、以下のような資料を準備する必要があります。
- 工事請負契約書
- 請求書
- 注文書
- 入金確認資料(通帳の写しなど)
多くの場合、上記の資料のいくつかを組み合わせて実務経験証明書の裏付けとします。また、これらの資料とは別に、工事の発注先に別途証明書を貰う場合もあります。
いずれにせよ、まずは過去の契約書や通帳などが保管されているかを確認する必要があるでしょう。
証明期間に常勤していたことがわかる資料
実務経験の証明として、証明期間に証明者のもとで働いていたことが確認できる資料も必要になります。
つまり、以前勤めていた会社で工事実績を証明したうえで、「本当に10年間そこで働いていましたよ」という証明をする必要があるのです。そしてこれも、証明者が個人であるか法人であるかで、必要な資料が異なります。
証明者が個人の場合
ご自身が個人事業主として積んでいた実務経験を証明する場合などは、証明者が個人になります。
その際、以下のいずれかの書類が必要です。
- 保険証の写し
- 所得税確定申告書の写し(証明する期間分)
証明者が法人の場合
以前勤めていた会社に実務経験を証明してもらう場合などは、証明者が法人になります。
要は「証明期間、この会社に勤めていましたよ」ということを証明します。そのために、以下のような書類が必要です。
- 保険証の写し
- 健康保険・厚生年金被保険者に関する標準報酬決定通知書
- 住民税特別徴収税額通知書
- 直近の決算の法人用確定申告書の写し
- 厚生年金記録照会回答票
- 健康保険組合等による資格証明書
上記の書類も自治体によって異なる場合があるので、こちらも申請先のホームページは事前に確認しておきましょう。
実務経験証明書の書き方や記入例をご紹介
実際に実務経験証明書を作成する場合、下の画像のような書類ができあがることになります。青字の部分は記載していただくにあたって気をつけるべきルールです。申請先により記載方法に小さな違いがありますが、サンプルとして東京都のものを挙げています。

作成する上で、特にご注意が必要な項目を簡単に解説します。
証明者の欄
証明者欄に記入する商号、代表者名などは「どの会社での経験を実務経験として使用するか」により、記載すべき内容が変わります。
申請する会社での経験を基に技術者(証明を受ける方)の実務経験を証明する場合には、証明者欄は申請者の商号などを記載することになります。
別なパターンで、過去に在籍していた会社での実務経験を証明したい場合、証明者欄は当時在籍していた会社の商号、代表者名などが入ることになります。当然、当時在籍していた会社から証明を受けることになるため、以前の勤務先から承諾を受ける必要があります。
実務経験年数の欄
技術者が実際に携わった工事の工期を記入します。
実務経験は工事の種類ごとに分かれているため、証明したい工種の経験が必要な期間(3年〜10年)記載できるかどうかがポイントです。
例えば、とび土工工事の実務経験が10年間必要な場合、この10年間には管工事の実務経験は含められず、実務経験年数の欄に記載してもカウントできません。あくまでとび土工工事の実務経験を10年分記載することになります。
実務経験証明書は自分で作成できるか
これまで見てきた実務経験証明書ですが、自分で作成するためのハードルはどのくらいでしょうか。
作成する難易度は高い
ここまでお読みいただいて感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実務経験証明書の作成難易度は高いと言えます。
裏付け資料と対応させながら作成することになりますが、必要な書類も場合によっては膨大な数になってしまいます。
例えば、10年間の工期を証明する場合、実務経験証明書では120ヶ月分の証明が必要です。
保管していた資料が申請に使えるかどうかも調べながら、それだけの証明資料を作成するには、かなりの時間と労力をかけなければなりません。
建設業専門の行政書士への依頼がおすすめ
実務経験証明書の作成は、建設業許可を専門としている行政書士への依頼がおすすめです。特に、建設業を専門としている行政書士がおすすめなのは、以下のようなメリットがあるからです。
- 「この書類は申請に使えるのか?」といった疑問にアドバイスをしてもらえる
- 膨大で手間のかかる実務経験の計算も任せられる
- 実務経験証明書の作成だけでなく、建設業許可や専任技術者の変更届など、申請・届出をそのまま任せられる場合も
また、行政書士に依頼することで、コンプライアンスに関するアドバイスが受けられたり、他の申請に関する疑問が解消できる場合もあります。証明書の作成だけに留まらないメリットがあるので、一度専門家に相談してみるのがおすすめです。
当事務所は建設業許可に特化した事務所です。
建設業許可の実務経験証明書の作成についてのお悩みはお気軽にご相談ください。
建設業の実務経験証明書とは?まとめ
建設業の実務経験証明書について、その内容や、その他必要な書類についてお話してきました。
内容をまとめると、以下のようになります。
- 実務経験証明書とは、専任技術者の実務経験を証明するための書類である
- 実務経験の数え方は申請先によって異なるので、自治体ごとに確認が必要
- 併せて実務経験の裏付け資料も必要になる
- 建設業専門の行政書士への依頼がおすすめ
実務経験証明書の作成には、どうしても時間と労力がかかってしまいます。難しいと感じたら、まずは専門家に相談することを検討してみてはいかがでしょうか。