建設業許可は取り消されることがあります。許可の取消しは法律のルールに沿って行われますが、社内を調整すればすぐに許可を再取得できるパターンと、5年間許可が取れないパターンの2つに分かれます。
どのような場合に許可が取り消されるか、取消し後の再取得について解説しています。
建設業許可取消しの2つのパターン
手続き上の取消し
法令違反などがあったわけではなく、建設業許可を受けるための要件を維持できなくなったために許可を取り消される場合があり、「手続き上の取消し」と言われます。
手続き上の取消しの場合、取り消されても要件をクリアすれば再度許可を受けることができます。この場合、5年間待つ必要はありません。
以下の場合は建設業許可申請の専門家である行政書士に依頼することをおすすめします。
- 建設業許可の再取得が可能かどうか知りたい
- 建設業許可の再取得手続きを早く正確に進めたい
当事務所は建設業許可に特化した事務所です。 建設業許可の再取得についてのお悩みなどお気軽にお問い合わせください。



不利益処分による取消し
こちらは法令違反等があった場合に行われる許可の取消しで、取消し後5年間は許可を受けることができません。取消しになった法人だけでなく、法人の役員や政令使用人(いわゆる支店長)、株主等も対象になります。取消し処分を受けたときに役員だった方が在籍している他法人でも許可を受けられないという意味です。
手続き上の取消しの具体的な例
これらに該当すると許可は取り消されることになります。ただし、取消しになった理由を解消すれば再度すぐに許可申請をすることができます。
人的要件を満たさなくなった場合
建設業許可には人的要件が2つあり、「専任技術者」と「経営業務の管理責任者(常勤役員等)」が常勤している必要があります。
この2つの人的要件を欠いた場合、つまり辞めてしまったり亡くなったりして代わりの方がいない場合には許可が取り消されます。
欠格要件に該当した場合
建設業許可には欠格要件といって、該当したら許可を受けられない項目が定められており、建設業法第8条に規定されています。以下一部抜粋します。
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなつた日から5年を経過しない者
- 心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの
許可替えがあった場合
建設業許可は都道府県知事と国交省大臣許可に分かれますが、知事許可から大臣許可に切り替えた場合、反対に大臣許可から知事許可に切り替えた場合には、従前の許可は取り消されます。
営業実態がない場合
建設業許可を受けてから1年内に営業開始しない場合、又は継続して1年以上営業を休んだ場合は許可が取り消されます。
建設業の専門業者出ない場合、1年以上建設工事の売上がない場合も考えられます。営業活動自体は行っており受注がないのであれば、「営業を休んだ場合」には該当しないので、許可が取り消されることはありません。
廃業届を提出した場合
建設業許可は以下の場合に廃業届を提出することになります。
- 許可を受けた建設業者が死亡した場合(個人)
- 法人が合併により消滅した場合
- 法人が破産手続き開始決定をうけた場合
- 法人が上記以外の理由で解散した場合
- 許可を受けた建設業を廃止した場合
廃業届というと言葉が強いですが、単に許可を受けた建設業の業種を廃止するだけで、事業活動全部を辞めるわけではありません。事業者からの廃業届に基づいて取消しが行われます。
相続の認可がなされなかった場合
2020年10月の建設業法改正により、建設業許可を受けた個人事業主が亡くなった際、跡取りの方が引き続き建設業を営む場合には建設業許可の相続の認可を受けることができるようになりました。
この相続の認可が何らかの理由で認められない(跡取りが建設業許可の要件を満たさないなど)場合、亡くなった方の許可が取り消されます。
許可の条件に違反した場合
都道府県知事や国交省大臣が事業者に対して建設業を許可する場合、発注者を保護するために一定の条件をつけることができます。県知事などの許可権者が付けた条件に事業者が違反した場合、建設業許可が取り消されることになります(ただし実務上は許可に条件が付けられる事自体が殆どありません)。
不利益処分による取消しの具体的な例
こちらは許可取消し後に5年間は再度取り直すことができない取消しです。当然経営上のマイナスが大きいので、避けるべき処分です。
なお、こういった事業者に対して影響の大きい処分をする場合、行政庁は「聴聞」か「弁明」いずれかの機会を与えることとされています。簡単にいえば事業者の意見や言い分を言う機会が事前に与えられるという意味です。
不正な手段により許可を受けた場合
許可基準を満たしていないにも関わらず、満たしているような外形を整えて許可申請書を作成したようなケースです。
専任技術者の経験年数を水増しして記載したり、欠格事由に該当する役員がいることを隠して誓約書(欠格事由に該当しないことの誓約書)を提出したりしたことが発覚すると、許可を取り消されることになります。
実際に全国では年間何件もこの事由による取消しが行われているので、「ちょっとなら嘘書いてもいいか….」は絶対辞めてください。
重大な違反や営業停止処分への違反
建設業法第28条に営業停止、指示処分などの規定があります。これらの項目に対する重大な違反があった場合、またはこれらの項目による営業停止処分に違反した場合に、許可が取り消されます(例えば「建設業者が建設工事を適切に施工しなかつたために公衆に危害を及ぼしたとき」など)。
なお、営業抵当の処分については「不正行為等が故意又は重過失によるときは原則として営業停止処分を、その他の事由によるときは原則として指示処分を行うこととする」とされています。つまり、違法行為と知っていて違反した場合などは営業停止を、悪意がなくやむを得ず行った場合などは改善に向けた指示処分をするという意味です。
許可が取り消しになったら
再取得へ向けた準備
もし意図しない許可の取消しを受けてしまったら、再取得が必要かどうか検討した上で、必要であれば再取得へ動くことになります。
取消しを受けた原因が上記の「手続き上の取消し」の場合には、この原因を取り除いて再度許可申請することで、建設業許可の再取得が可能な場合があります。
申請先の行政庁によく確認して、申請が可能かどうかの事前確認から入るのが良いでしょう。
もちろん、建設業を専門としている行政書士事務所に相談されることで、早く正確に手続きを進められる可能性があります。
当事務所は建設業許可に特化した事務所です。 建設業許可の再申請に関するお悩みは是非一度ご相談ください。



取消しを受けた原因が「不利益処分による取消し」の場合には、会社及び役員、株主、支店長等が所属する法人では5年間許可を受けられません。
建設業を継続しようとする場合には、他の経営陣、意思決定機関等を迎え入れるなどの対策が必要です。
コンプライアンスの徹底
意図しない取消し等の処分は、事業経営に大きな計画変更などを引き起こす可能性が大きいので、極力発生しないようにします。コンプライアンス、法令遵守を徹底することでしかこのような不利益処分などは避けられないので、法令知識の習得と遵守は事業継続の非常に大きな要素です。