「建築一式工事とは?具体的にどのような工事?」「建築一式工事の建設業許可を取得したいが、取得の要件がわからない」
以上のような疑問やお悩みをお持ちではないでしょうか。建築系の工事であっても、他の専門工事に該当する場合があり、判断に迷われる方も多いかと思います。
そこで今回は、建築一式工事について解説していきます。建築一式工事の具体例や建設業許可を取得するための要件について、詳しく確認していきましょう。
建築一式工事とは
建築一式工事とは、「総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事」です。
言い換えると、元請で請け負う新築工事が、建築一式工事と言えます。東京都の定義によれば「建築確認を必要とする新築工事・増改築工事を元請で請け負う工事のこと」が建築一式工事です。
以上のように、元請で請け負う建築工事が該当し、建築系の工事すべてが建築一式工事ということではありません。建築一式工事業の建設業許可を取得していても、500万円以上の他の専門工事を単独で請け負うことはできないため、注意しましょう。
建築一式工事と専門工事の違い
建築一式工事のような「一式工事」は、それ以外の「専門工事」と異なる点があります。ここでは、建築一式工事と他の専門工事の違いについて、確認していきましょう。
一式工事
一式工事とは、「総合的な企画・指導・調整のもとに土木構造物・建築物を建設する工事」です。
建設業29業種のうち、土木一式工事と建築一式工事の2つのみが一式工事になります。一式工事は大規模で複数の工種が関わる複雑な工事です。
そのため、元請業者として、下請け業者に依頼を出しながら、包括的に行う工事だと言えます。
専門工事
専門工事とは、単独で実施する専門的な工事です。土木一式工事、建築一式工事以外の27業種が専門工事になります。
建築一式工事の具体例
建築一式工事の具体例として、以下のような工事が挙げられます。
- 戸建の新築工事
- ビル等の新築工事
- 戸建、ビル等の増改築工事
- ビルの外壁に固定された避難階段を設置する工事
ただし、「ビルの外壁に固定された避難階段を設置する工事」は、場合によって鋼構造物工事に該当する場合があります。行う工事の内容に注目して判断することが必要です。
一方で、たとえ建築系の工事でも、塗装工事や内装仕上工事などの専門工事に該当するものは、建築一式工事には該当しません。これらの専門工事を行う場合にはそれぞれに対応した建設業許可が必要になるため、注意が必要です。
建築一式工事の建設業許可取得の要件
建築一式工事の建設業許可取得のためには、以下いずれかの要件を満たす専任技術者の常勤が必要です。
- 一定の資格を有する技術者
- 一定の実務経験を有する技術者
以上のように、技術者の方が一定の資格または実務経験を有している必要があります。ここからは、専任技術者のこれらの要件について見ていきましょう。
一定の資格を有する技術者
資格によって専任技術者になるためには、以下の資格を有している必要があります。
- 一級建築施工管理技士
- 二級建築施工管理技士(建築)
- 一級建築士
- 二級建築士
申請にあたっては、資格証等を提出することになります。実務経験によって専任技術者になるよりも、一般的に必要な書類は少ないと言えるでしょう。
一定の実務経験を有する技術者
実務経験によって専任技術者になるためには、10年以上の実務経験が必要です。
注意が必要なのは、建築一式工事についての実務経験を書類で証明する必要がある点になります。たとえ10年以上の経験があっても、客観的に書類で証明しなければ、建設業許可を取得することはできません。
許可取得のために必要な書類は、申請先によっても大きく異なります。許可行政庁が公開している手引きをよく確認しましょう。
年数の数え方についても申請先によって異なりますが、証明すべき期間が長いほど必要な書類が多く、手続きは難しいです。
技術者の方が専門学校や高等学校などで特定の学科を卒業している場合、これらの期間が短縮できる場合もあります。まずは期間短縮の可能性がないか確認することをおすすめします。
実務経験の証明にあたっては、前職の会社や個人事業主として自身が証明者となります。
証明者が建築一式工事の建設業許可を取得していたか否かによっても、提出する裏付け資料が異なるため、注意が必要です。
一例として、以下のような書類が必要になります。
- 許可取得していた場合:建設業許可通知書、許可申請書、変更届、廃業届等
- 許可取得していない場合:工事請負契約書、請求書、注文書、通帳等の入金確認資料、発注先の発行する証明書等
特に、許可取得していない場合に揃える書類は多くなり、手続きも難しいことが一般的です。
資格の取得を目指す、資格取得している方を雇用するなど資格による許可取得も目指しながら、場合によっては専門の行政書士への相談も検討することをおすすめします。
まとめ
建築一式工事の具体例や、建設業許可取得に関して必要な要件について解説してきました。まとめると、以下のようになります。
- 建築一式工事とは、大規模で複数の工種が関わる複雑な工事のこと。
- 建築一式工事の具体例として、戸建、ビル等の新築、増改築工事が挙げられる。
- 建築一式工事の建設業許可を取得するためには、一定の資格または実務経験を有する専任技術者が必要。
建設業許可を取得するためには、申請のための準備が必要になります。
ここで挙げたような建築一式工事を行う可能性があり、建設業許可が必要になる場合には、早めに準備を進めるようにしましょう。