「産業廃棄物収集運搬業の許可とは?どのような時に必要?」「産業廃棄物収集運搬業の許可取得方法を知りたい」
以上のような疑問や悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
産業廃棄物を収集・運搬するには許可を取得している必要があります。しかし、実際にどのような場合に許可が必要なのか、どのような流れで許可を取得するのかについて詳しく知らないという方も少なくないと思われます。
そこで今回は、産業廃棄物収集運搬業の許可について、詳しく解説していきます。
そもそも産業廃棄物収集運搬業許可とは何か、という話から、取得にかかる時間や手続きの流れについて見ていきましょう。
産業廃棄物収集運搬業の許可とは?
産業廃棄物の収集・運搬は、許可がなければ行うことができません。まずはどのような許可なのか、産業廃棄物とは何かについて解説します。
産業廃棄物の収集・運搬には許可が必要
産業廃棄物収集運搬業とは、工場や建設現場などで排出された産業廃棄物を、中間処分場・最終処分場に搬出することです。
そして、産業廃棄物の収集・運搬は、都道府県知事による「産業廃棄物収集運搬業許可」を取得してる事業者でなければ、行うことができません。
つまり、産業廃棄物を適切に保管、収集運搬できる事業者であると認められなければ、産業廃棄物収集運搬業を行うことはできないということです。
ここで注意が必要なのは、都道府県ごとの許可になるという点です。一つの都道府県で許可を取得していても、異なる都道府県で収集運搬業を行うためには、行う場所で許可取得をしなければなりません。
例えば、東京都でのみ許可を取得している場合、隣県の神奈川県に産業廃棄物を運搬することはできません。運搬先も含めて、許可の申請先を検討することが必要です。
産業廃棄物とは?
産業廃棄物収集運搬業の対象となる「産業廃棄物」とは、以下のものを指します。
- 燃え殻
- 汚泥
- 廃油
- 廃酸
- 廃アルカリ
- 廃プラスチック類
- ゴムくず
- 金属くず
- ガラス
- コンクリート
- 陶磁器くず
- 鉱さい
- がれき類
- ばいじん
- 紙くず
- 木くず
- 繊維くず
- 動物系固形不要物
- 動植物性残さ
- 動物のふん尿
- 動物の死体
以上の区分のなかでも、毒性や感染性があるもの、人体・環境に悪影響があるものについては、「特別管理産業廃棄物」と呼ばれています。この場合、特別管理産業廃棄物収集運搬業許可が必要になるため、注意が必要です。
産業廃棄物収集運搬業許可の許可取得にかかる時間は?
産業廃棄物収集運搬業の許可取得には、4か月程度の期間を要します。
まず、申請書の準備に1か月程度の期間が必要です。許可申請の際には、添付書類として公的な証明書などを数多く準備しなければなりません。
また、申請書の作成についても、申請先ごとに細かなルールがあり、作成に関するノウハウがなければ更に時間がかかってしまいます。
また、申請後に各都道府県で審査が行われ、3か月程度の期間を要します。以上を合計すると、産業廃棄物収集運搬業許可の取得には、4か月程度の時間がかかるのが一般的です。
産業廃棄物収集運搬業の許可申請の流れ
産業廃棄物収集運搬業の許可申請は、以下のような流れで行います。
- 講習の受講
- 申請書類・手引きの入手
- 申請書類の作成・証明書の取得
- 申請先都道府県への申請
- 都道府県による審査
ここからは、以上の流れについて一つずつ確認していきましょう。
講習の受講
まず、産業廃棄物収集運搬業の許可取得には、講習を受講する必要があります。
講習とは、公益社団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が実施する「産業廃棄物又は特別管理産業廃棄物処理業の許可申請に係る講習」です。
この講習は全国各地で行われていますが、毎日行われているものではなく、日程が定められています。事前にスケジュールを調べたうえで、受講しておかなければなりません。
許可申請の準備を進める前に、まずは公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)のホームページで、日程を確認しておきましょう。
受講しなければならないのは、許可取得をするのが個人であれば本人が、法人であれば代表者または役員です。一度受講して修了証書をもらえば、新規修了証書は5年、更新修了証書は2~5年有効になります。
申請書類・手引きの入手
産業廃棄物収集運搬業の許可申請には、申請書類や手引きを入手する必要があります。
申請書類、手引きは、申請先となる都道府県のホームページに掲載されています。申請先によって必要な書類が異なる場合があるほか、作成に関しても細かなルールが定められています。
書類の準備、作成の前に、よく内容を確認しておきましょう。
申請書類の作成・証明書の取得
申請書類や手引きを入手した後は、申請書の作成と添付書類の準備を行います。申請書類の様式の例として、以下のようなものが挙げられます。
- 産業廃棄物収集運搬業許可申請書
- 事業計画の概要
- 運搬車両の写真
- 運搬容器等の写真
- 事業の開始に要する資金の総額及びその資金の調達方法
- 誓約書
これらの書類は、申請先がホームページ上で公開している手引きや記載例を確認しながら作成を進めていくことになります。書類ごとに作成に関するルールが定められており、誤りがあると訂正や再度作成をしなければならなくなるため、注意が必要です。
運搬車両や運搬に使用する容器などの写真も申請書類に貼付しなければなりませんので、あらかじめ準備しておきましょう。
添付書類の例としては、以下のようなものがあります。
- 定款
- 履歴事項全部証明書
- 役員、株主の住民票
- 役員、株主の登記されていないことの証明書
- 事務所、車庫、積替え保管施設の位置図、配置図
- 講習会修了証
- 自動車の車検証
- 直前3年分の決算報告書
- 法人税確定申告書
- 納税証明書(その1)
履歴事項全部証明書や登記されていないことの証明書は法務局、住民票は市区町村の役場で取得する必要があります。また、納税証明書は納税地を管轄する税務署で取得しなければなりません。
以上に挙げた添付書類はあくまで一例で、申請先によって必要な書類も異なる点に気を付けましょう。書類作成、添付書類の準備に共通して言えることですが、手引きをよく確認することが大切になります。
申請先都道府県への申請
申請書類が整ったら、許可を取得したい都道府県に書類を提出します。
一般的に書類一式を持参する窓口受付で受付が行われていました。しかし、新型コロナウイルス感染症対策のため、郵送により受付をしている都道府県もあります。場合によっては、申請前に予約が必要になります。
申請方法についても書類作成と同様、都道府県ごとにルールが異なります。
申請の際に手数料も納付することになりますが、納付方法も異なる場合があるため、よく手引きを確認してから申請をしましょう。
都道府県による審査
申請書類を提出し、無事受け付けられると、都道府県による審査が行われます。
審査には申請後から、通常は3か月程度の時間を要します。審査後許可が出れば、許可番号などが記載されている許可証が交付されます。
産業廃棄物収集運搬業の許可後の注意点
産業廃棄物収集運搬業の許可を取得してからも、車両表示と書類携帯の義務があるので注意しましょう。ここからは、車両への表示と、書類の携帯について解説していきます。
車両への表示
産業廃棄物を運搬する車両には、以下を表示しておく必要があります。
- 産業廃棄物を収集運搬している旨
- 事業者名
- 許可番号の下6桁
表示はマグネットシートなど、着脱できるものでも可能です。荷台への表示も可能ですが、シートなどで表示が隠れてしまう場合には、表示義務違反になってしまうこともあります。
書類の携帯
産業廃棄物を運搬する車両では、以下の書類を携帯しておく必要があります。
ごく一部の例外を除いて、以上の書類を携帯しなければなりません。書類携帯の義務に違反すると、改善命令や営業停止処分などの対象になってしまいます。車両表示の義務とあわせ、十分注意しましょう。
まとめ
産業廃棄物収集運搬業の許可について、その概要や取得方法について解説してきました。まとめると、以下のようになります。
- 産業廃棄物の収集・運搬には、都道府県ごとの許可が必要。
- 許可取得までは4か月程度の時間を要するが、作成に関するノウハウがないとさらに時間がかかる可能性もある。
- 申請書類の作成や添付書類、提出方法など、申請先による細かな違いがある。
- 許可取得後は車両表示や書類携帯の義務がある。
産業廃棄物収集運搬業の許可を新たに取得する際には、作成する書類、取得する証明書は多いです。一般的に、申請までの難易度は高いと言えるでしょう。
「書類作成をする時間がない」「手引きを見ても作成方法がよくわからない」という場合には、専門の行政書士に相談してみることをおすすめします。