建設業者が利用できる税務上の優遇措置や補助金助成金について解説

建設業者が活用すべき資金調達策について概要を解説します。金融機関からの借入や資本増強などのほか、補助金等の制度を利用することで資金調達、税務上の優遇による事実上の調達に近い効果を期待できます。

なお、制度は会計年度による年々変化していくものなので、ご検討の際には「最新の制度の施行状況」を必ずご確認ください。

補助金と助成金の基本的な違い

建設業者が企業の成長のために新たな資金調達策を検討する際、まず理解すべきは補助金と助成金の違いです。これらはどちらも国や自治体が提供する返済不要の資金ですが、管轄や目的、採択基準が異なります。この違いを把握することが、自社の目的に合った制度を選び、資金を確実に得るための第一歩になります。

補助金は主に経済産業省が所管し、事業の革新性や競争力強化を目的とします。そのため、公募期間が短く、提出された事業計画に基づいて審査が行われ、採択件数には上限があるのが特徴です。一方、助成金は主に厚生労働省が所管し、雇用の維持や人材育成労働環境の改善を目的としています。多くは要件を満たせば原則として受給でき、比較的審査のハードルは低く設定されています。例えば、新たなITシステム導入による生産性向上を目指すなら補助金、社員の資格取得費用を支援したいなら助成金、といった棲み分けが基本です。

優遇措置を検討するタイミング

優遇措置の活用を検討する最適なタイミングは、企業の具体的な成長戦略経営課題が発生した時です。目的がないまま制度を探しても、申請準備に多大な時間とコストを浪費するだけになります。例えば、将来的な労働力不足を見据えて建設機械を自動化する計画があるなら「設備投資」のタイミングであり、次世代の職人を育成するための研修プログラムを導入するなら「人材育成」のタイミングといえます。

企業の成長ステージに応じた投資課題解決の計画が明確になった時点で、補助金、助成金、税制優遇措置の中から最も有効な手段を選ぶべきです。具体的には、新規事業を開始する、大型設備を導入する、雇用形態を改善する、研究開発に着手するといった決定をした際に、優遇措置の情報を収集し、活用計画を策定することが重要です。

設備投資や技術革新に役立つ補助金と税制

ものづくり補助金や事業再構築補助金の活用

建設業の競争力を高めるためには、生産性を劇的に向上させる設備投資技術革新が不可欠です。これらの投資を強力に後押しするのが、ものづくり補助金事業再構築補助金といった大型の補助金制度です。これらの制度を理解し活用することで、自己資金だけでは難しい規模の投資を実現できます。

ものづくり補助金は、革新的な製品やサービスの開発、または生産プロセスの改善に必要な設備投資などを支援します。建設業であれば、3Dスキャナーやドローンの導入、BIM/CIM関連のソフトウェア導入、プレカットやプレハブ化のための自動加工機の導入事例が多く見られます。一方、事業再構築補助金は、コロナ禍や物価高騰などの経済環境の変化に対応するため、新規事業への進出事業転換を支援します。例えば、建設業者が本業で培った技術を活かし、太陽光パネル設置事業ドローン測量サービスを新たに立ち上げる際の費用などに充当できます。補助金はいずれも競争性が高いため、市場性課題解決の具体性将来の収益見込みを盛り込んだ詳細な事業計画書の作成が採択の鍵となります。

生産性向上に資する設備投資の税制優遇

設備投資を行う際、補助金と合わせて検討すべきなのが税制上の優遇措置です。これは、投資額の一部を法人税から直接控除したり、通常の減価償却費より多く経費計上できるようにしたりすることで、実質的な投資負担を軽減する制度です。

具体的には、中小企業経営強化税制(旧生産性向上設備投資促進税制)などが活用できます。この制度は、質の高い生産性向上設備を取得した場合、即時償却(全額を一括で経費計上)または税額控除(取得価格の最大10%を法人税から控除)のいずれかを選択できるものです。建設業における新型の建設機械高効率の空調設備基幹業務のITシステムなどが対象となります。この税制を適用するためには、事前に経済産業局による設備計画の認定が必要となる場合があり、また税務申告時に必要な別表の添付を忘れてはなりません。

研究開発活動にかかる費用の特別控除

建設業においても、新工法の開発、環境に配慮した新素材の導入、IT技術を用いた現場管理システムの構築など、競争力を高めるための**研究開発(R&D)**活動は重要です。これらの費用は、**研究開発税制(研究開発費の特別控除制度)**により優遇されます。

この制度は、企業が支出した研究開発費の一定割合を法人税から控除できるものです。控除割合は、研究開発費の増減率や規模によって異なりますが、最大で法人税額の25%まで控除可能です。対象となるのは、技術的な課題解決や製品の改良を目的とした活動の費用であり、具体的には研究に関わる人件費原材料費外部委託費などが含まれます。この優遇措置を活用するためには、研究開発活動の記録を明確に残し、それが客観的に**「研究開発」**と認められるための根拠を整理しておく必要があります。

雇用や人材育成に使える助成金と優遇策

キャリアアップ助成金など人材育成の支援制度

建設業界が抱える人手不足技術継承の課題解決は、企業の持続的な成長に不可欠です。これらを支援するのが、主に厚生労働省が所管する助成金制度であり、その代表格がキャリアアップ助成金です。

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者正社員化処遇改善人材育成などに取り組む事業主に対して支給されます。建設業で特に活用できるのは、有期契約社員を正規雇用へ転換した際の支援や、社員の技能向上のための職業訓練資格取得にかかった費用の一部を支援するコースです。助成金は、雇用保険社会保険の加入など、労働関係法令を遵守していることが前提となります。例えば、社員に建設機械の運転免許施工管理技士の資格を取らせるための外部研修費用や賃金の一部が助成金の対象となります。

雇用促進や職場環境改善にかかる費用

従業員が長期的に安心して働ける職場環境を整備することは、優秀な人材の定着生産性向上に直結します。このための設備投資制度導入にも、助成金が活用できます。

例えば、特定の要件を満たす高年齢者障害者母子家庭の母などの特定求職者を雇用した場合に助成金が支給される雇用促進を目的とした制度があります。また、職場環境の改善を目的とした助成金では、従業員の育児や介護を支援するための制度導入や、快適な作業服安全衛生機器の導入、健康診断の充実など、働きやすい環境づくりにかかる費用が支援対象となります。これらの助成金を活用する際は、就業規則労働協約などに、導入した制度が明確に規定されていることが必須条件となります。

優遇措置を確実に適用するための手続き

申請前の事業計画と期限の確認

補助金や助成金、税制優遇措置を確実に活用するためには、申請前の徹底した準備期限の厳守が最も重要です。特に補助金は、公募期間が短い上に、一度不採択となると再申請までに時間を要します。

補助金申請においては、事業計画書の完成度が採否を分けます。この計画書には、市場の課題自社の優位性実施体制、そして補助金を使った後の具体的な成果(売上増、利益増、生産性向上など)を具体的に記載する必要があります。申請期限はもちろんのこと、申請に必要な見積書決算書各種証明書などの収集と作成に要する時間を逆算してスケジュールを組むことが不可欠です。計画段階で専門家(行政書士や税理士)に相談し、申請書類の不備をなくすことも、確実な採択に繋がります。

税制優遇措置の適用と税務申告

税制優遇措置は、補助金と異なり、基本的に確定申告を通じて適用を受けます。そのため、期中の正確な会計処理申告時の手続きが非常に重要です。

例えば、特別償却税額控除を適用する設備投資を行った場合、その資産の取得価格導入日などの情報を会計帳簿に正確に記録する必要があります。法人税の申告時には、優遇措置の内容に応じた別表(付表)を添付し、税務署に対して優遇措置の適用を求める手続きが必要です。別表の記載漏れや誤りがあると、適用が否認される可能性があります。特に、即時償却を選択した場合、帳簿上は大きな赤字となる可能性があるため、将来の税負担金融機関からの評価を考慮し、税理士と連携して適用方法を決定することが賢明です。

利用後の実績報告と管理義務

補助金や助成金は、支給を受けて終わりではありません。事業者は、資金の適正な利用を証明するために、利用後の実績報告管理義務を負います。

補助金の場合、事業完了後には実績報告書の提出が義務付けられ、実際に事業計画通りに実施されたか、費用が適切に使われたかを確認するために会計検査が行われます。税制優遇措置についても、固定資産税の特例を受けた場合などは、その資産を一定期間、事業に使用し続ける義務が生じます。これらの義務を怠ると、補助金の返還を求められたり、追徴課税の対象となったりするリスクがあります。そのため、優遇措置を利用した資産の台帳や、事業の進捗記録経費の領収書などを法令で定められた期間、適切に保管・管理することが、事業者の責任となります。

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